淡雪が溶ける頃2【HQ】/稲荷崎 (ページ23)

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お父さんは言葉を失って立ち尽くしていて

手元から落ちた袋を

侑が恐る恐る拾い上げた

「Aに寂しい思いをさせたり、苦労をかけとるんは申し訳ないと思っとる

でも、おとん達はAを産んだことを後悔しとらんし
…少なくとも、俺はあいつと結婚したことを後悔なんてしてへん」

『…勝手だね』

私はこんな大人にはならない

それは両親合わせてのことだ

お母さんがお金や男に逃げたのは

お父さんが忙しいといつも家を開けていたから

お母さん(あの人)は目に見える愛を欲しがる人だった

『侑』

「ﾊｲｯ」

『…わざわざ送ってくれたのにこんなとこ見せて、ごめん』

「いや…」

子犬のように肩を竦めていた侑が

眉を下げながら

「Aちゃん、これ」

お父さんが落とした袋を私の手に握らせる

中にはゼリーやプリン、OS1

(風邪じゃないっての)

『ほんと、全然分かってない…』

「…Aちゃんが好きなん、ミルクのってるプリンやもんな」

子供をあやすみたいな優しい声

侑はお父さんに挨拶をして

「ほんじゃAちゃん、また明日な」

手土産に何かを持たされ帰って行った

「A…、おかんはな」

『聞きたくない。どうでもいい』

「…プリン、今度からはミルクのってるやつ買うてくるからな」

そうじゃない

そういう事じゃない

だけど

「庇うわけやないけど、あいつにはあいつで事情があったんや

まあ、Aを巻き込んでええわけなかったんやけどな」

お父さんはしみじみといって

「すまんかったな」

と謝った

散々裏切られて
いつも怒ってばかりだったくせに

「飯、何がええ？
今日ははよかえって来れたし俺が用意するからAは休んどき」

学校から連絡がいって
直ぐに帰ってきてくれたんだろうか

もし、親御さんに連絡をと言われた時

私がお父さんに電話をしていたら、来てくれた？

仕事中断させたら迷惑でしょ？
そう思ったから言わなかったんだよ

お父さんの仕事は

“家族”よりも大切にすべき人達がいる

「ご飯いつも何号炊いとるっけ？」

『4号』

「そんなにA白米食うてんの？」

『お弁当とおにぎりにして持ってってるから』

「…生活費のやりくりとかいつも任せっぱなしにしてもうてたけどなんか手伝えることあるか？」

『別に。
家で食べない日は連絡くれればそれでいい』

「…おん」

Aに甘えすぎとったなぁ

なんて

(何を、今更)

・・・

「「おはよーさん」」

『何してるの』