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ページ18

目を覚ましたのは夕方になってからの事で

保健の先生は席を外しているようだった


時計を確認するともうすぐ部活の時間だ


鞄を掴んで保健室を出ようとすると


「どこ行くん」

『え、』

先生の代わりに北さんが静かに座っていた


『北さん…、なんで』

いや、違うそんなことより


『あ、あの。私のせいで皆さんにもご迷惑お掛けして本当にすみません…!

わ、私…』


バレー部を辞めさせられたらどうしよう

私がクビになるならまだいい

もし選手に迷惑がかかったら

稲荷崎の名に傷をつけてしまったら


「顔上げ。なんで南が謝んねん」

『だって…事実なんですっ、』


あの貼り紙の内容は事実だ


宮城に住む私の母親は
そういう仕事をしている


【女が1人で生きていく為には体を売るしかない】

小さい頃そう言っていたのをよく覚えている


物心がついてその意味を理解できるようになってからは

そうはなるまいと勉強をしてきた



今だってお父さんが時々、親権を譲ったことを理由にお金をせびられていることも知っている


【女】はあの人の武器だ


(汚らわしい)

あの人と同じ血が流れているなんて


鏡を見る度に思う

私の容姿は誰がどう見ても母親譲りだ


それが嫌で仕方なくて

自分の顔が大嫌いだった


「それが何と関係あんねん
事実やろうが関係ないやろ」

『…え?』

「南のおかんが何をしてようが、南には関係ない
別の人間なんやから当たり前や」

『でも、みんな軽蔑して…』

「人には事情ってもんがあるやろ
仕事はよく知りも知らんのに第三者が人を落とせる理由にはならんし

そもそもそういう職業が悪なんて誰が決めんねん」


体を売ることしか出来ないバカな女だと
軽蔑しないんですか?


同じDNAを持つ私を汚いと思いませんか?


「今日は部活には行かせへんし
落ち着くまで来んでええ」

『そんな…っ』


「南が不要とか、罰とかそんなんちゃうで

今いっても南もしんどいし周りも気遣うだけや」

『……』

「誰もお前を弾こうとするやつなんておらんし

南自身を知らずに勝手なこと言う奴らなんてこっちから切り捨てておけばええ」

涙がこぼれそうになるのを必死で抑えようとしてるのに

留まることを知らず、床に模様を作る


「南がちゃんと(・・・・)帰ってくること、皆待っとるから

今は休み」

相変わらず無機質な声の中の、優しさ

「侑も部活出られへんからまだその辺おるんちゃうか」

『…なんでっ、』

「人殴って部停や」

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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時

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