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なんの変哲のない一日になるはずだった
いつも通り朝練を終えて
靴を履き替えて教室に向かう
いつも通りの日常
「なんや、これ」
黒板に貼られた写真の前に人だかりが出来ていて
私が教室に入った瞬間、皆の視線が一気にこっちへ向いた
好奇の目
軽蔑の眼差し
侑がズカズカと歩み寄って紙をビリビリと破き踏みつける
「誰や。これ貼った奴」
入部当初私に向けたあの声より
もっと低い声
「出て来い言うとるやろが!」
侑の拳が黒板に叩きつけられ、反動でチョークが落ちて折れる
「A、保健室」
『…平気、』
「顔、真っ青だから」
倫が私を隠すように肩を引き寄せた
バン!と荒々しくドアが開いて
「おい、どうなっとんねん」
目に殺気を血走らせている治
「は、まさか…」
「俺らのクラスにもあった」
治の言葉に鳥肌がぶわりと立つ
「貼られとる分は全部剥がしてきたし、治が犯人見つけたらぶっ殺す言うて牽制かけてきたからもう増えんとは思うけど…」
銀は眉を八の字に下げて
「もしまた見つけたら俺らが1枚残らず剥がすし、こんなん気にすることないで。A」
『ごめ、なさ…』
「え?」
『春高前の、大事な時期なのに
私のせいで、迷惑…』
「何言うとんねん!今は自分の心配しろや!」
「ツム!Aに怒鳴ってどうすんねん」
「…っ、分かっとる」
「とりあえず保健室に連れてくから」
倫に支えられながらガクガクと震える足を無理やり動かす
『倫、どうしよう』
「大丈夫、あいつらが全部剥がしてくれたって」
『私のせいで、春高出られなくなったら』
「…は?」
『私のこんなつまんない事件のせいで、みんなに迷惑かけたらどうしよう
3年生、最後なのに…』
「何言ってんの、A
あんなので出場停止になるわけないじゃん」
『でも…っ』
何故か、泣きそうな顔をしているのは倫で
「だから、みんな言ってたじゃん
こんな時位自分の心配してよ」
俺たちなら、大丈夫だから
倫が縋るように言った
ほとんど抱えられるように保健室につくと
私の顔色に保健医の先生まで顔を真っ青にしながらベッドへ通してくれた
「少し寝て、起きたら今日は帰り
親御さんに連絡出来る?」
『…父子家庭で…父は、仕事中です』
「他に頼れる大人は?」
『…部活があるんです
行かないと、』
「部活なんて行ける状態じゃないわよ
とりあえず今は寝ときなさい、」
「また来る」
倫の言葉を最後に、意識を手放した
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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時