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『治が食べたくて買ってきたんでしょ？』
｢おん、まぁ…
でもA別にそんな量食わへんやん｣
時々、治は私にもお菓子を分けてくれたりする
有難く受け取っていたけど
｢珍しいな、治が人に食い物分けるの
俺らには絶対くれへんのに｣
と銀が言ったのを聞いてからは不思議に思っていた
『なんでいつも分けてくれるの？』
｢…Aって食えたらなんでもええって感じやん。
お腹が空くから食う、腹を満たすために食う、みたいな｣
そんな風に見えてるのか…？
｢でも、美味いもん食ったら幸せになるし、楽しいやんか
やから、それがAにも伝わったらええなーって｣
『ありがとう治』
｢ん｣
『綿菓子、好きなんだ
昔お祭り来た時はいつも買ってたの
貰ってもいい？』
｢もちろん｣
私はウェットティッシュを取り出して、治にも1枚渡す
『食べる前に治も手ふいちゃいな』
｢おかんや｣
｢お、来た！｣
銀の声と共に、夜空にぱあっと花火が上がる
｢おー、すげぇ｣
｢ほんまや！でっけー！｣
見上げた暗闇に、煌めいて咲き誇る花
『…綺麗』
｢…綺麗やなあ｣
隣の治も優しい声で言った
『見て、治！あれキツネの形だよ』
｢ほんまや｣
｢A！あれ見てや！トマトやで!?｣
『ほんとだ』
｢そこの2人は交互に幼児化すんのなんなの｣
『え？私も？』
花火に見とれている私に
｢A、あーん｣
『あー』
ひょいひょいと食べ物を押し込んでくる治
｢美味い？｣
『うん』
ラストに向けて最後に連続で上がる花火
すごく綺麗なのに
(もう、終わっちゃうんだ)
って寂しくなる
“A、今の見たか!?すごいな！”
“来年も一緒に来ような！”
無邪気に笑うあの子の顔を思い出して
｢やー、凄かったな｣
｢ここマジで穴場やな、めっちゃ見やすい｣
｢綺麗やったな…___A？｣
私の顔を覗き込んだ治が目を丸くした
大きな体育館のコートで
誰にも求められなくなった、孤独な王様の背中が脳裏に浮かぶ
｢…どうしたん｣
『ううん、ごめんなんでもないの
花火、終わっちゃうのが寂しくて』
頑張って笑顔を作ろうとしてみても
治は不満そうな顔のままで
飲み干したラムネのフタを開けると、ポンッと音を立ててビー玉を取り出した
｢花火ならまた見れるやん
来年も来れるし、なんなら他の場所やったらまだこれからのとこもあるやろ｣
『…うん？』
｢なんべんでも付き合うたるから、そんな顔せんといて｣
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りな∞(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます！これからも心を揺らすお話をお届け出来るように頑張ります！楽しんでいただけると嬉しいです🥺 (10月29日 20時) (
レス) @page45 id: 6423446c77 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - 心がギュッとなってとても動かされました！！続きがとても気になります🥹 (10月29日 14時) (レス) id: 9f951b305f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りな∞
| 作成日時：2023年10月9日 4時
