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北さんであるはずもなく


目を丸くして立っていたのは宮 侑だった


「……」

『………』

沈黙の時間が流れて

私の呟きが聞こえていたのか、聞こえていないのか

もし、聞こえていたとしたら


(最悪だ…)

1番、バレちゃいけなかった人

「なんや、はよ来て頑張ってますアピールか?
ようやるなー」

『……』

「北さんが早う来てんの知っとるから、同じように早起きしてそうやって取り入ったんや?」


違う


この言葉が出てこない

別に認められたいと思ったわけじゃない

でも、朝1番北さんと2人の時間


誰にも邪魔されないあの時間に
特別な感情がなかったかと言えば、嘘になる

『…そういうつもりじゃ…』

絞り出した言葉に

「はぁ?ちっちゃい声でボソボソ喋んなや」

侑はイラついた口調で私を見下ろす


「誰目当てで入ったん?
仲ええみたいやし、角名か?
それとも、サム?」


ドクン、ドクンと心臓の音が大きくなる


「まさか、俺やなんて言わへんよな?」


『…私、誰がバレー部かなんて知らなかったし、そういうんじゃない』


北さんを除いて、だけど


「ほーん…」

図星だから、

私は彼の瞳が苦手なんだ

侑は、私みたいな人をきっと許さない

私が北さんに縋るのは

自分の弱さを、彼の強さに甘えることで見えないようにすることだから

この人は逃げないで走り続けられる人だから


「俺は、バレー以外なんもいらん

興味本位で騒ぎ立てる喧しい奴らが嫌いや

…邪魔したら、女やろうが泣かすからな」

『……』


北さんのそばに居たいとか

北さんのサポートをしたいとか

そんなの私のエゴでしかなくて


別に頼まれたわけじゃない

北さんがそれを望んだ訳でもない


侑の言う通りだ


ここでプレーをしてる人達は

色んなものを犠牲にしても
私みたいに逃げずにここまで続けてきた人達で

稲荷崎バレー部(ここ)は彼らの全てだ

私が、自分の都合で好きに荒らしていい場所じゃない


「言い返しもせんのかい

興醒めやわ」


2人だけの体育館に

彼がボールを床に叩きつける音が響いた



「おいツム。先いくんなら言えや」

「てか、侑が治より早いとか珍しくない?」

倫と治が続いて入ってくる

「A今日も早いね、おはよ」

『おはよ、』



「昨日言うてたやつどうしても試したくてなー
今ならできる気ぃすんねん!

サムも角名もはよ用意してやろうや」

「おー」

「A、…侑となんかあった?」

『なんにもないよ』

「…そ、」

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りな∞(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!これからも心を揺らすお話をお届け出来るように頑張ります!楽しんでいただけると嬉しいです🥺 (10月29日 20時) (レス) @page45 id: 6423446c77 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - 心がギュッとなってとても動かされました!!続きがとても気になります🥹 (10月29日 14時) (レス) id: 9f951b305f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年10月9日 4時

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