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ページ15

『ボール出し?』

「あー、こうやってボールを出してくれりゃええねん」

大耳さんがボールを上げると3年生の先輩が鋭い音を立ててスパイクを打ち込む

(で、出来るか?あんなこと)


自信がなくて周りをキョロキョロしようにも他に手の空いてる人はいない

見よう見まねで上げたボールは、明らかに選手たちとは違う方向へ弧を描く

「はよ出してくれる?」

よりによって、待っているのは宮侑だ

慌ててもう一度ボールを上げる

今度はなんとか範囲内には上がったけれど


バシィィィィィン!

音を立てて目の前でボールが跳ねた

『…っ』

心臓が、止まるかと思った

てんてん、と転がるボールを拾い上げたのは、双子の片割れの治


「おい侑!お前やりすぎやって!」

「当ててないしぃ」

「寸前やったやん!」

「ちゃんと当てんように狙ってるから大丈夫ですって

こんなんじゃ、的にでもなってもらう以外練習になりませんわ」

顔を真っ青にしたアランさんに私を蔑んで見下ろす侑

冷や汗が背中を伝う


「ツム、俺がやったるからもう1本いくで〜」

治の方が私の目の前にたった


「邪魔なんやけど」

『…ごめ、なさ…』

言葉が出なかった

「サム!お前サボりたいだけやろ!」

相棒をスルーして、溜息をついた彼は

「今度こそボール当たっても知らんで」

と冷たい声で言った


「A」

誰かが私の名前を呼ぶ


体育館(この空間)に、私の名前を呼ぶ人なんて居ないはずなのに

「ごめん、遅くなった」

『…なんで』

私の腕を掴んだのは、倫だった


「さすがに怪我させんのはなしでしょ」

クールな表情は崩さないまま
少し怒った声で言った倫

「とりあえずコートの外」

掴まれた腕のせいで
震えているのは、多分彼にはバレていたと思う

恥ずかしくて、悔しくて、情けなくて

(…消えたい)

「…あのさ、今のは」

『ごめん、もう平気だから倫は練習戻って』

「いや…」

『大丈夫だから』

「…ちょっと休んでな」

倫はそう言って練習に戻っていく

次のメニューに切り替わる前にと急いでボトルを入れ替えて戻ってくると

ちょうどレストになった所だった

「侑。さっきのはなんや」

北さんの声だ

「北、さっきのは俺がついろくに説明もせずやらせてもうたから…」

大耳さんまで、空気の重さに申し訳なさそうに口を挟む

「大耳さんは悪ないですよ

俺はまともにボール出しも出来へんような奴の世話にはならん」

ボトルを抱えている私を宮侑の瞳が捉えた

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りな∞(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!これからも心を揺らすお話をお届け出来るように頑張ります!楽しんでいただけると嬉しいです🥺 (10月29日 20時) (レス) @page45 id: 6423446c77 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - 心がギュッとなってとても動かされました!!続きがとても気になります🥹 (10月29日 14時) (レス) id: 9f951b305f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年10月9日 4時

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