淡雪が溶ける頃【HQ】/稲荷崎

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「んで、なんだっけ。ボトル？」

ケータイを置いた倫は私のノートを覗き込む

「何これ」

『バレー部用のノート…
色々、勉強不足だから』

「クソ真面目」

はっと鼻で笑って

「あー、この後大体ゲームになるからこの前に貰えると助かるわ」

『1箇所に集めるより、こことここに置いたら飲みやすかったりする？』

「まぁ助かるけど、回収大変なんじゃない」

『いや、問題ないよ』

「しいていうなら、ここに置いてくれりゃ俺達もラッキー、あんたも回収楽でウィンウィンなんじゃない」


『なるほど、頭いいね』

「宮ツインズよりはね」

あいつら、単細胞だからと軽々しく言ってのける

『ありがとう、助かった』


昼休み、昼寝をしていたせいで売店のパン争奪戦に出遅れた彼にお弁当を礼品に時間を作って貰った


「つか、俺があんたの弁当くったら昼飯どうすんの」

『夜用におにぎりも持ってきてるから大丈夫』

「めっちゃ食うじゃん」

『練習の後、部日誌とかみて色々勉強して帰ってるからお腹空くんだよね』

「…クソ真面目」

『それやめない？』

「そんな遅くまで残ってて家の人心配しないの」

『お父さんは仕事終わるの遅いし全然
朝だって私がいつ家出てるのかも知らないと思うし』

「仲悪いの？」

『そんな事ないけど、まぁ父子家庭だから外で頑張ってきてくれてるんだよ』

「あー、そう」

良心、君にもあったんだね。

と思ったことは胸に秘めておくことにして

「つか、よく続けてんじゃん」

『ん？』

「俺の予想の1週間。超えちゃいそうだから」

『ああ』

北さんやアランさん、倫は挨拶以外にも機会があれば言葉を交わすことはあっても

無駄話をするような仲ではないし

もちろん部活中にそんな空気になることすらない


他の選手も
ビブスを回収したり、ボトルを渡したりなにか作業をすれば

「サンキュー、」
「あざす」

と声はかけてくれるが気まずい気持ちにさせてしまっていると思う

申し訳ない限りだ

時々嫌悪感を顕にする先輩だっているけどね

「あんな待遇受けたら普通辞めちゃうと思うけど」

『…みんな挨拶は返してくれるし、お礼も言ってくれる

最近やっと、ちょっとずつ出来ることも増えてきたところだから』

それに

宮兄弟の治の方は

(ちゃんとお礼、言うんだよな…)


『それより
アスリートなんだから菓子パンじゃなくて栄養のあるものちゃんと食べた方がいいと思う』

「おかんか」




ー

「マネさん、ボール出し入れる？」

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