白昼夢Ⅱ (ページ26)

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梅雨の終わり

天気予報ではギリギリまで雨で

止む気配のない午前中の雨に

(晴れろ、晴れろ…！)

って願ってた

雨が上がれば飛び上がりたくなるほど嬉しくて

らしくなく、鏡の前で髪の毛をなおして家を飛び出した

お待たせ、って声がして振り向けば

浴衣で現れる女子達

大「わ！みんな浴衣やん」

みゆ「お母さんが着付けてくれてん！」

恥ずかしそうにニコニコしているAは可愛くて、

「なあ、みんなで花火大会行こうや！」

なんて半ば無理やりにでもこじつけたかいがあった

打ち上がった花火にみんなが目を輝かせる中

隣で上を見上げる彼女の横顔をそっと盗み見てた

長いまつ毛とうなじに目を奪われて

急にこっちを見た君と目が合う

驚いたように目を見開いて、慌てて逸らした君の頬は少し紅くなっていて

困ってる時も泣きたい時も笑おうとする君の
本当の素顔を見れたような気がして

いつも笑顔でいるくせに目の奥が笑っていない

そんなAの本当の笑顔が見たくて

『花火中止かなぁって思ってたんやけど晴れてよかった』

「晴れるって言ったやろ」

『どうして分かったの？』

「どんな雨の日やって、俺がいれば快晴やから」

なにそれって笑う君に
いつの間にか夢中やった

ー

蝉の鳴き声がささる真夏

「待ってた」

視線の先には、

「浴衣、可愛い」

あの日と同じように、頬を赤らめる浴衣の君

中3の夏

現れることない君を待ち続けた

何も言わず姿を消した君を忘れられなかった

あの日の続きを

「りんご飴買いに行こや」

『りんご飴？いいけどなんで？』

「Aの顔がりんごみたいに真っ赤やから笑」

大学生の時、2人で誘うことは出来なくて

みんなで行こうと提案した

「なーあー、俺も甘いの食いたい！」

健「食いすぎやろ。花火見に来たんとちゃうんか」

『あげるよ。リンゴ飴』

「へ、？」

君がふいに差し出したりんご飴

ずっと思ってた

(次こそは、2人で)

って

ー

『お祭り自体は何度も一緒に行ったのになんか変な感じ』

「そやなぁ」

『今日食べ物あんまり買ってなくない？どうしたの？笑』

「両手塞がったら手繋げないやろ」

『え？』

「ずっとさ、こーやって隣歩くの夢やってん」

Aの手に指を絡めて
触れた手だけで君の体温が上がったことが分かる

「好きやで、A」

『…私も、大好き』

今年の夏は、君と2人で

ー

金魚すくいの屋台の前

『恭平君？』

足を止めた先には

「美月」