繋いだ手

特別な時間 ページ8

あなたside


休日真司郎の部屋で2人、ゆっくり過ごしていた日の事。


ソファに座って他愛もない話をしていると、鳴り出した真司郎のスマホ。


真「うわ、会社からや。
　 なんやねん〜休みの日に。
　 ちょっとごめんな。」


ぶつぶつ言いながらスマホを手に取り、電話に出る真司郎。


お休みの日なのに大変だな、なんて思いながらその姿を見つめる。


真「あの資料ですか？
　 はい、わかりました。
　 明日間に合うように変更しときます。」


スマホを切って何やら困惑気味の表情をする。


どうしたんだろ？


真「Aごめん、少し仕事してい？
　 資料の変更があってん。」


申し訳なさそうな表情をしながら頭を掻いている。


あ「大丈夫だよ。私の事は気にしないで？」


真「ほんまごめん、すぐ終わらすな。」


私の頭をひと撫ですると立ち上がりパソコンを手にして戻ってきた真司郎は、眼鏡を掛けてパソコンを開く。


あ「ね、真司郎。
　 邪魔にならないように静かにしてるから見
　 ててもい？」


真「ええけどなんも面白いことないで？」


あ「いいの、見ていたいだけ。」


何やねんそれ、何て言いながらパソコンに目線を移した真司郎。


私はソファの端っこに膝を抱えて座り直し、パソコンに向かう真司郎を見つめる。


眼鏡の奥の瞳は真剣でリズミカルに叩かれるキーボード。


時折独り言を呟いたり、顎に手を添えて考え込む姿。


部署の違う私達は、こうしてお互いが仕事をしている姿を目にすることは珍しい。


私はたまに部長のお使いで海外事業部に行くことがあったから何度か見かけた事はあるけど、こうして目の前でゆっくり見れた事はない。


だからこうして真司郎が仕事をしている姿を見れることがとても貴重で、なんだか新鮮。


眼鏡をかけた姿も、その真剣な横顔も、惚れ惚れするほど格好いい。


こんな格好いい真司郎が私の恋人だなんて。


きっと真司郎はモテるんだろうなぁ。


だってこんなに格好いいんだもん。


抱えた膝に顔を載せて見つめていると、不意に真司郎が私の方を向くから胸がドキッとした。


真「Aそんな見られとると恥ずかしいんやけど…。」


あ「ふふ、仕事してる真司郎格好いいなと思っ
　 て。」


素直な気持ちを伝えるとほんのり赤くなる真司郎の耳が可愛らしくて頬が緩んでしまう。


2人で過ごす時間も大切だけど、こうして仕事してる真司郎が見れるのも、私にとって特別な時間に変わる。

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