繋いだ手17

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真司郎side


あ「ごめん、ねっ……。
　 っ……、私がもっと、ちゃんとっ＿＿＿、」


赤ちゃんと対面したAは、悔しそうに声を押し殺して肩を震わせる。


それをすぐそばで見ていた高畑先生は、Aの目線に合わせるように腰を屈めると


「そんなに自分を責めなくていいのよ」


と、優しい口調で言った。


あ「でもっ、」


「確かにもっとちゃんと気をつけていればって
　思う気持ちはわかるわ。
　でもね、長年産科医をやっていても今回のよう
　な事は予測できない事がほとんどなの。
　いくらそれまで順調でも誰にでも起こる可能性
　があることだし、突然起こることも多い。
　だから、そんなに自分を責めなくていいの」


確かにAは妊娠中、なにも異常や問題がなく順調そのもので、倒れた日の朝も、どこも変わった様子は見られなかった。


「こんな事を言うべきではないのかもしれないけ
　れど…Aさんも赤ちゃんも助かった今だから言うわね」


それまで優しい口調だった高畑先生は、声のトーンを少しだけ下げて話し始めた。


「今回起きたことではね、両方の命を失って
　しまうこともあるの」


あ「っ……！」


「あるいはどちらか一方が助かって、どちらかの
　命を失くしてしまうケースもある。
　正直、Aさんも赤ちゃんも、とても
　危険な状態だったわ」


…あの時。


高畑先生から電話が掛かってきた時、【覚悟しておいて】と言われた事を思い出して。


その時の恐怖心が蘇ってくるようで、胸が苦しくなってくる。


「緊急で帝王切開しないと危ない状態で、時間と
　の勝負だった。
　赤ちゃんを取り出した時もね、仮死状態だった
　のよ」


あ「…え」


「だけどね、すぐに息を吹き返してくれたの。
　身体は小さかったけど、大きな声で泣いてくれ
　たし力強く手足も動かしてくれた。
　赤ちゃんってね、私達が思ってるよりも
　ずっと強いのよ」


そう言いながら、高畑先生は優しく微笑んでくれて。


真「先生、Aも赤ちゃんも、両方助けてくれて、ほんまにありがとうございました」


手術が終わった時も、Aの意識が戻った時も伝えたけど、力を尽くしてくれた先生に改めて御礼を伝えれば。


「さっき、時間との勝負だったっていったわよ
　ね？」


真「はい、」


「私達が助けることができたのは、みんなのおか
　げでもあると思う」

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