繋いだ手12

あたたかい ページ29

あなたside


あ「玄さん春恵さんありがとうございます。
　 また来ますね。」


「みんなにもよろしくね。」


「真司郎くんもまた来てな。」


真「はい、また寄らせてもらいます。」


挨拶を交わすとお店をあとにして歩き出す。


真司郎の手には出来たての鯛焼き。


あ「ほんとに良かったのかな…。」


真「玄さんああ言ってたし、好意はありがたく
　 受け取っといたらええと思うで。」


玄さんと春恵さんに実彩子が無事に元気な男の子を出産した事を伝えると、自分達の事のように喜んでくれた。


お店に寄るたびにいつも実彩子の体を気遣い、赤ちゃんが産まれてくるのを心待ちにしてくれていた玄さんと春恵さん。


そんな玄さんは【わし達からの出産祝いだ鯛焼き持っていきな！】と言ってくれて。


さすがに数が多いしお代を渡そうとしたけれど受け取ってもらえず、20個もの鯛焼きを結局頂いてしまった。


春恵さんはお代の代わりに【今度顔見せに来てね】とにこにこ笑顔で言ってくれた。


ここの商店街はあたたかい人ばかり。


買い物へ行くと必ず声をかけてくれて旬の食材や美味しい食べ方を教えてくれたり、さらにはおまけまでつけたりしてくれる。


そんな人情味に溢れたこの商店街が私は好きで、今では毎日のように買い物に来ているほど。


なかでも玄さんと春恵さんはとくに親しくさせてもらっている。


いつも仲睦まじくお店を切り盛りしている2人を見ているのが好きで、ついついお店に立ち寄ってしまう。


今日も真司郎を紹介することができたし、真司郎も玄さんと何やら楽しそうに話していたのが嬉しかった。


あ「ねぇ真司郎、玄さんと何話してたの？」


真「俺？俺はAの事やみんなの事聞いてた。」


あ「そうなの？」


真「おん、玄さん孫娘みたいで可愛いんやって
　 嬉しそうに言うてたで。」


あ「そんな事話してたんだ。」


そんなふうに思ってくれてたとは知らず、嬉しくなる。


真「玄さんがAは笑顔が似合うって言うてた。それに元気もらえるって。」


あ「そ、そうかな。」


真「俺もそうやで。
　 Aの笑顔が好きやし、元気もらってるもん。」


あ「褒めすぎ…なんか恥ずかしい。」


真「照れとる笑ほんま可愛いなAは。」


あ「もーからかわないで！
　 冷めちゃうといけないから早く帰ろ！」


そう言って可笑しそうに笑ってる真司郎の手をぎゅっと握りしめ、照れを隠すように歩みを早めた。

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