繋いだ手 Specialedition

蛍 ページ40

あなたside


「ママー！！」


あ「おかえり、ゆい」


幼稚園バスから、元気よく飛び出してきたゆいを抱きとめる。


3歳になって春から幼稚園に通いだしたゆいは、シェアハウスのみんなと一緒なのもあるのか、毎日にこにこ笑顔でバスから降りてくる。


今は梅雨のジメジメした季節。


朝降っていた雨はもうあがっていて。


長靴を履いて幼稚園に行ったゆいは、他の子と一緒に道にできた小さな水たまりに入っては、楽しそうな声をあげて、家までの道を歩く。


実「早く梅雨終わんないかなぁ」


美「梅雨明けたら明けたで、暑いのやだけどね」


あ「それもそうですね〜」


他愛もない会話をしながらも、いつもと変わらず仲のいい私達。


「じゃあね！バイバイ！」


家に着いてみんなと別れると、ゆいはさっと制服から服へと着替えて何かを始める。


「ママ！みちゃだめだからね！」


あ「はいはい笑」


ゆいはいつものように言うと鼻歌を歌いながら、小さな身体をめいっぱい動かし始める。


というのも。


ゆいたちが通っている幼稚園では、夏休みに入ってすぐの土曜日に、園での盆踊りが開かれることになっていて。


今ゆいは、その盆踊りの練習をしているところ。


今は7月の初めで、幼稚園が夏休みに入るまであと少し。


【ほんばんまでないしょ！】


と言いながらも、リビングの真ん中で踊るもんだから、見ないようにしていても目に飛び込んできてしまうんだよね。


見ちゃだめと言われたけれど、横目でバレないようにチラ見しながら、私はおやつの準備にとりかかる。


小さな身体をめいっぱい使って、一生懸命練習している姿がすっごく可愛くて、毎日私は頬を緩ませてばかりだ。


ゆいが一通り練習し終わったところで、ちょうどおやつも出来上がり


あ「ゆい、おやつできたから、手洗ってきてね」


「はーい！」


元気な返事のあと洗面所にかけていくゆい。


まだまだ元気が有り余っているみたいだ。


✻✻✻✻✻


「ママのパンケーキ、おいしい！」


あ「よかった」


今日のおやつはゆいの大好きな、ふわふわパンケーキ。


シロップと生クリームたっぷりで、ゆいはひとくち食べては幸せそうな顔をする。


この顔を見れるのが、なによりも嬉しい。


その幸せそうなゆいを微笑ましく見ていると、何かを思い出したかのように口を開いた。


「ねぇママ。
　ママは、ほたるさん、みたことある？」

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