繋いだ手10

あの日の気持ちと、今の想い ページ29

真司郎side


あ「ねぇ真司郎、袖捲ってくれない？
　 真司郎の大きいから、やっぱり手の先まで
　 隠れちゃう。」


すっかり萌え袖になってしまった手を揺らして見せるA。


そのままでも可愛いからいいんやけどな、なんて思いながらも、捲くってあげながら


真「Aはちっこいからなー、」


あ「それ、あの日も言われた、」


真「全然成長してへんな笑」


あ「この歳で成長しないでしょ笑」


そんな会話をしながら、あの日の記憶が蘇る。


あの日も、こうして俺のシャツを着たAの袖、捲くってあげたな。


立ち上がったAは、子供みたいに腕を揺らして、その姿が可愛くて、どうしようもなく愛しかったのを思い出す。


その時、あの日と同じように風が吹いて、オレンジ色に染まったAの髪を揺らした。


あ「風が出てきたね、」


顔に掛かった髪を耳にかけながら、呟いたAがすごく綺麗で、俺の胸が音を立てる。


―――トクン


今日の俺の胸は、痛んだり、高鳴ったりと、とても騒がしい。







好きで好きで、大好きで、どうしようもなく愛しい想いが、とめどなく溢れ出してくる。


出逢えたのが、Aでよかった。


好きになったのが、Aでよかった。


愛した人が、Aでほんまによかった。







真「A、今更やけど、聞いてくれる？」


振り向いたAの瞳を、真っ直ぐに見つめて


真「A、好きや…。」


あの日、伝えられなかった気持ち。


真「これから先も、ずっとずっと、愛してる。」


今伝えたい、俺の想い。


声に出して言葉にすれば、


あ「ありがとう真司郎、嬉しい。
　 私も、ずっとずっと、愛してる…。」


今は返ってくる愛しい声。


見つめ合ったまま、Aの温かい手を握り


柔らかな頬に触れ


そっと唇を重ねた。





―――……。






それはまるで、初めてした口づけのようで


少し恥ずかしくて


でも嬉しくて


額を合わせ、2人で照れたように笑いあった。

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