繋いだ手10

かなわない ページ28

真司郎side


あ「だからもう、後悔しないで？」


繋がれた手から伝わる、温かなぬくもりと


胸に響いた言葉。


後悔なんて、今まで何回も何百回もしてきた。


それなのに。


Aのその言葉で
あの時伝えられなかった想いも、後悔してきた
気持ちも、なにもかも、救われた気がした。


それはきっと、同じように後悔が胸の中にあった、Aだから言えた言葉。


そしてAにしか言えない、言葉達。


Aに言われるまで、そんなふうに考えたこともなかった。


どれほど時間が経っても、消えることはなかった
胸の中の後悔は、1つ考え方を変えるだけで
違う想いに変わる。


あ「ここ、大切な場所なんでしょ？
　 きっとここでも、後悔ばかり考えてたんじゃ
　 ない？」


真「全部お見通しやな、Aには。
　 なんでわかるん、」


あ「わかるよそれくらい。
　 どれほど真司郎の事愛してると思ってる
　 の？」


可笑しそうに笑う。


あ「こんなに素敵な海なのに、ずっと後悔に囚わ
　 れてたら、もったいないよ。」


【ね？】と、俺に笑いかける。


あ「それに離れてた時間があるから、こうして
　 一緒にいられる大切さにも気付けたって、
　 思えない？」


それも言われたとおり。


離れてた時間があったから、2人で一緒に過ごせる大切さ、喜びを感じる事ができた。


ほんま、Aってなんかすごい。


いつまでたっても、Aにはかなわない。


Aの肩口に額をつけて、大きく息を吐く。


真「…かなわんなぁ、Aには、」


ぼそり、と呟く。


あ「うん？」


Aには、教えられることばっかりやな俺。


真「Aの頭ん中、どうなってるん、
　 覗いてみたいわ、」


あ「覗いてみる？
　 真司郎の事しか頭にないけど、」


真「俺やってそうやし、」


顔を上げて言い返した言葉に、クスクス笑ったかと思えば、


あ「真司郎も私も、もう後悔するのはこれでおし
　 まい。いい？」


落ち着いた声で諭されて


真「…ほんま、ごめん。」


また思わず出た言葉に、


あ「…それ以上言うと、私でも怒るよ？」


眉間にしわを寄せて、怒ってみせる顔。


そんな顔も可愛くて。


真「少し、怒られたいかも…、」


なんて言えば、


あ「…バカなの？」


真顔で返される。


真「関西人に、バカはゆったらあかんねんで？」


あ「そんなの知らないー笑」


またケラケラと笑い出して、つられるように俺も笑ってしまった。

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