繋いだ手10

もしもの話 ページ21

真司郎side


真「おん、」


俺が、好きやと言いそうになった時。


夕日に照らされた綺麗な髪に、思わず手を伸ばして。


Aの真っ直ぐな瞳と目線が絡んで、どうしようもなく愛しくなって、喉元まででかかった想い。


あの時、離れることを怖がらずに伝えとればと何度後悔したことか。


あ「そうだったんだ。
　 ずっとね、何を言いかけたのかなって気に
　 なってたの。」


納得したような声。


あ「私は、我慢できなかったんだよね。
　 でもあれは真司郎が悪いんだよ？」


真「え、俺？！」


…俺、なんかした？


あ「真司郎が、あの時抱きしめたりするから…。」


あー、それ。


真「あの時は、その、あれやん。」


あ「あれってなに笑」


真「来てくれると思ってへんかったし、
　 嬉しかったんやもん。」


最後に会えた嬉しさと、俺の事を忘れてほしくない想い、離れたくない想い、愛しい想い、全部が込み上げてきて、考えるよりも先に、体が動いてしまった。


あ「あの時抱きしめられて、もう無理だった
　 の。
　 好きな気持ちが溢れちゃって…。
　 伝えずにはいられなかった。」


ふふ、と小さく笑う。


あ「言うつもりじゃなかったのになぁ。」


真「そうなん？」


あ「そうだよ、だからあれは真司郎のせい。」


ちらりと横を向いて、今度はいたずらに笑った。


あ「でも、今思えば、いいきっかけだったのかも
　 ね？
　 抱きしめられてなかったら、私から伝える
　 ことはなかったかもしれない。」


そう思ってくれるなら、俺のせいでええわという気になってくる。


あ「ねぇ、もしもの話し、していい？」


真「ん？」


あ「もしもあの時恋人同士になってたら、
　 あの離れてた期間、私達はどう過ごしたのか
　 な。」


そんなん考えたことなかったな。


離れてた約1年半、もし俺やったら…。


真「そやなぁ、もちろん毎日電話して、メッセー
　 ジもやり取りして、あとは…、」


あ「あとは？」


真「会いたくなったらすぐ会いに帰っとったと思
　 う。
　 たぶん1ヶ月に1回は帰っとるな。
　 もしかしたら、もっと多かったかもな。」


会いたいと思ったらすぐ行動してしまう俺やから、きっとそうしてたやろう。


あ「それはだめだよ。」


真「なんで？」


あ「ただでさえ飛行機に乗ってる時間長いし、
　 時差もあるし、倒れちゃうよ？」

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