繋いだ手10

あの日の2人 ページ19

真司郎side


あ「綺麗な夕日…。」


夕日が沈み始めて、オレンジ色に染まっていく海を見つめてAが呟いた。


真「A、少し座ろか。」


あ「うん、」


その時


あ「っくしゅん、」


隣のAがくしゃみをする。


真「A、上着は？」


あ「…車の中に、置いてきちゃった、」


耳に髪をかけながら、恥ずかしそうにする。


日中は気温が高いLAも、日が落ち始めると、それに伴って気温も下がる。


今のAは、膝丈のノースリーブワンピース姿。


さっきとは違い冷たい風も吹き始めたし、さっきまで海で遊んでたから、身体が冷えたんかもしれん。


真「Aはうっかりさんやなぁ、
　 これ着とき。」


俺は、自分の腰に巻いてたシャツを取ると、Aに着せてあげる。


あ「真司郎寒くないの？」


真「俺はこうするから平気、」


砂浜に腰を下ろしたAの背後にまわって、後ろから包み込む。


あ「ふふ、あったかい。」


真「俺も。」


それからしばらく、Aを後ろから包み込んで、オレンジ色に染まってゆく海を眺めていた。


その夕日を見ていると、色んな思いが駆け巡り、胸がいっぱいになってくる。


すると、Aが何かを思い出したかのように笑い出した。


真「ん？なに？」


あ「あの時も、こうしてシャツ貸してくれたね」


あの時―――――。


それは、俺がLAにたつ前の日のことやろう。


あ「ねぇ、こうしてると思い出さない？」


真「ん？」


あ「真司郎がLAにたつ前の日のこと、」


真「俺も今思ってた。あの日と同じやなって。」


ちょうどあの日も、こんな綺麗な夕日やった。


あ「真司郎はあの日、なんで私を誘ってくれた
　 の？」


真「あー、それは…日本におる最後の1日、
　 Aと過ごしたかってん。
　 あの時、ちょっとした物が欲しいって言うん
　 は、実は口実やった。」


あ「口実だったの？」


真「おん、」


ただ一緒におりたくて、何かないかなと考えた結果のただの口実。


真「そういや俺が誘った時、Aも何か
　 言いかけたやんな？」


あの時、お互いの声が重なったのを思い出した。


あ「私もね、誘おうと思ってたの。」


真「何に？」


あ「映画。その後、一緒にご飯でもって。
　 私もね、真司郎と過ごしたかったんだ。」


真「なんや、同じ気持ちやってんな。」

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