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「おう！優衣の飯、美味かったやろ？」
なんて笑顔で話してくる
スーツ姿のしげ。
見慣れないスーツ姿に
私の胸は何故かときめく。
くそ、悔しい。
こんなんでときめくんだもん。
本当に情けない。
なんて、思いながらも
単純にしげに会えたのが嬉しかった。
「うん！美味しかった！」
そう笑顔で返すが余裕は全く無い。
優衣ちゃんの隣に立っているしげ
この2人があまりにもお似合いで
あまりにもしっくりきて
もうこの家には一生来ないことを
小さく誓った。
「じゃ、うち帰るね！」
そそくさと帰ろうと２人の横を通り過ぎる
「はあー？なんかお前、変やない？」
「え？何がー？」
こういう時に目を合わせちゃいけない。
しげと目を合わせたら…、
「あ！優衣ちゃん！
本当にありがとう！お邪魔しましたー！」
私は革靴を履いてそう言ってから
ドアノブに手をかける。
「あ！ちょい！Aっ！」
そんな、しげの言葉を無視して
優衣ちゃんの家から出て行った。
少し小走りで夜道を歩く。
まだ冷える夜の街。
夜空にはちらほらと輝く星。
やっぱり、行かなきゃ良かったなぁ。
ああ、弱い自分。
ほんまに弱い。
涙が止まらん。
しげはやっぱり変わってしまった。
学生のときのしげとは違う。
優衣ちゃんは特別だと
確信してしまった。
学生のときのしげが彼女に接していた感じと今の感じが全く違う。
ほんまに大切で傷つけたくない人なんや。
それがはっきり分かっちゃったんやもん。
鼻をすすりながらも
涙は止まらない。
いい大人が、
なにやっとんねん。ほんま。
すると、
「A」
あぁ、等々幻聴まで聞こえだした。
やばいな、うちどんだけ好きなん。
好きだよ。もう、ずっとやもん。
これが私の中じゃ当たり前で…
「おい、Aっ」
に、してもリアルやな。ほんまに。
しげ、今頃彼女と笑いあってるんかな。
優衣ちゃんの笑顔と
しげの笑顔が重なる。
ほんま、そっくりやもん。あのふたり。
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作者名：kaname | 作成日時：2017年3月22日 1時
