【文スト】人工信者【中原中也】

参ノ弐 ページ8

椅子に座り、確りと拘束された其の人は女であった。







ぼんやりとした目が此方を向いた。




濁った茶色い目が小さく揺れる。






「…死刑宣告にでも来たの？迷惑掛けてて申し訳ないわね？」





口を開いたのは彼女だった。申し訳ないなんてこれっぽっちも思っていないだろう軽い調子で云って、乾いた笑みを浮かべた彼女は、僅かに動いて座り直した。






「死刑は未だ先だぜ。手前には情報が有るからな。」






拷問の準備でもさせるか？



そう云って中也さんが指を鳴らした。嗚呼、格好いい。形の整った手がパキリと軽い音を鳴らした。






「拷問は結構よ、何も隠さないから。嘘も言わないわ？心配なら嘘発見器でもなんでも持ってくるといい。



…私だってね、自分をこんな目に遭わせてるあの女は殺したい位憎いのよ。」






乾いた笑みのまま、彼女の濁った目は更に暗く成った。






拘束に使われている頑丈な鎖。其の型に沿った痣が、薄暗い地下牢でも判る程に赤黒く見えた。

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