【文スト】人工信者【中原中也】

拾玖の肆 ページ46

爆発さえしてしまえば毒の痕跡は残らない。例え爆発の規模を中也自身が抑えても、付着した毒が中也を殺す、ということだろう。





「ま、肝心の爆弾はAが消しちまったけどな。」


「……結果としては、そうですよね。」




そう、あの日、何故か違和感に気が付いたらしいAは幹部補佐から封筒をひったくり、爆弾を見るや否や異能力を展開させた。




曰く、



「自分を死傷させる可能性のある非生物は、認識した後触れると分子単位で消滅させられる」



とのこと。彼女が弾丸の中も突っ切っていけるのはこの異能がある為だ。





反則級の力技で、彼女は安全をもぎ取ると共に重要な証拠を消し去ってしまった。




まともな犯人探しが行われることも無いまま有耶無耶になってしまったのも、それが原因だとされてきた。



の、だが。蓋を開けてみれば、反乱分子を監視する為の言い訳に過ぎなかったらしい。






「一度失敗した上、物的証拠もある以上奴は容易には動けねェ。Aが目立つもんだから結果人の目も付き纏うようになったし、当分は大人しいだろうよ。」




彼は罠に掛かったようなもの、と云う訳だ。



Aが日頃から云い続けている「中也さんは私がお守りする」というのは、確りと実行されていたらしい。本人は気が付いていないようだが。





「排除はしないんですね」


「そりゃあな。少なくとも幹部補佐になれる逸材だ。使える時に使うってのが首領のお考えだ。」





縢はこういう内情を知る度、自分はレールの上を走らされているのだ、という気分になる。
ポートマフィアでは特にその傾向が強い。

我等が首領の力量は計り知れないとつくづく思う。





Aが首領を苦手とするのも分かる気がする。


彼女は首領が参加する会議には何かしらの理由を付けて縢を代理に立てる。大元の理由に「如何にも気に食わない」と来た。




彼女はポートマフィアに対する忠誠心など持ち合わせていないらしい。

彼女が忠誠を誓うのは、中原中也ただ一人。その中也の意思に従って、彼女は甘んじて首領の駒となっているのだ。





「此れは先輩には云えませんね。」



「だろ？」





全く仕様がねえなあ、とでも云いたげに中也は微笑む。




其の何とも優しい目を見て、


嗚呼全く、愛されてるなあ先輩、と縢は肩をすくめた。

拾玖ノ伍→←拾玖ノ参

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアイテム

革ベルト

本日の戦利品

中也さん(激昂)の写真

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す