イヤホンは知っている 【探偵チームｋｚ事件ノート】

仮面を外す時　遥side ページ37

仕事の合間にトイレに行き、出ようとした時。



女性の話し声が聞こえて、盗み聞きしてしまった。


「昨日の、三草君の対談みた？」

「見た！誘拐された姉ね。美夜さんと…この子は亡くなったらしいけど。」

「花夜さんね！」


ドク…ドクドクッ
　

鼓動がいつもに増して速い。


夏真っ盛りなのに冷や汗が頬を伝う。

それは、冷房のききすぎのせいではなかった。






アイツは、実名公表しやがった！



メディアで言っちゃったから警察が動くだろう。






戸籍を見たらすぐ私だって分かってしまう。









いや、待てよ。



三草家が警察に調べないでと頼んだら？



警察はきっと動かない。



三草家にはそれほどの力があるんだから。


どうかお願い、警察が動きませんように。


トイレの個室で願う私はバカなのかも。


トイレに誰もいない事を確認して個室から出た。


もしも神様がいるのなら。


神様が願いを叶えてくれるのなら。


私は不安にならなくて良いのに。


イライラしなくて良いのに。


手を洗いながら鏡で自分の顔を眺める。


不安そうな泣き出しそうな顔。


笑顔とはほど遠い顔をした私が映っていた。




あ〜あ、私って本当にダメな子供。



笑ってなさい。


そうお姉ちゃんに言われたのにな。


粗末なご飯。

少ない貯金額。


自分の無力さが浮き彫りになった気がして。


中学生の時みたいに死にたくなった。


早くお姉ちゃんに会いたい。


この苦しみから逃れたい。


そんな願望を抱いて、私はいつしか死ぬ方法ばかりを考えるようになった。



歩きながら、誰か私をひいてくれないかな〜とか思って。


でも誰もひいてくれなくて、


今日も私は生きてるんだなぁってしみじみ思って。

一日が終わっていくんだ。


地震でも起こって家、潰れないかな。


周りの家は大丈夫で、私だけ死ぬの。


あ、そうそう。


最近、図書館にkzが頻繁に来るようになったよ。


本を探すフリをしてチラチラ私を見てる。



私に話しかけるタイミングを探しているらしい。





だから私は探偵たちに話しかけられないようにした。



kzが近づいてきたらその場を離れる。


お姉ちゃん、ごめんなさい。


約束を破って。


反省はしているの。

ただ、笑えない。


せめて、泣かないようにするから許してね。

kz、ごめんなさい。



無視をして。


悪いな、とは思っているの。

ただ、話すと私が不幸になるから。

私の幸せの為だと思って許してね。

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