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これは恋じゃない。


…愛だった。
本当は最初から気づいていた。
彼を愛していたことを。

たとえわたしがいくら樹さんを愛そうと彼にとってのわたしは単なる通過点の一つにしかならない。
でもわたしは通過点になんかできない。
樹さんはわたしの終着点だ。


「今までありがとう。助かった」
涙がこぼれ落ちる前にそう言って足早に部屋を出た。



なのに引き止めるように後ろからこの細くて男らしい体が抱きしめてくる。
まるで四方八方カルダモンとキャラメルの匂いに包囲されているように、わたしの周りのすべてが樹さんに侵略された。



『A…マジでごめん。本当にごめん。幸せを奪って…』
「…」
『ずっと言わなきゃと思ってた。けどお前のことが好きで一緒に過ごせば過ごすほど言えなくなった。
手放したくなかったから…初めてちゃんと好きになった相手だから…言えなかった』



これはきっと本音だと思いたい。
ううん本音だと思う。
でも、だからって一緒には居られないよ…。


「わたし、好きだったよ樹さんのこと…」

「でも今知ってしまった以上ここに居場所なんてないの…それに今はここに居たくない。ごめんなさい」



腕を振りほどき、足早に家を去った。
この豪華絢爛でわたしを惨めにさせる家を。
バスしかない。
たとえ変な輩に絡まれようとバスしかないから停留所で待ちながら菜摘ちゃん、高地くん、大我くんにお礼のメールを送っておいた。



バスには幸いなことに変な輩は乗っていなかった。
わたしは一番うしろの席で涙を流した。
また一人でしか泣けなくなってしまったかもしれない。
唯一わたしの涙を受け止めてくれる人から私は逃げるようにして去ってしまった。


去り際の彼の腕の力の強さ、弱々しい言葉、懇願するすべてが、
わたしのことを好いてくれた紛れもない証拠が泡のように消えていきそうで、泣いた。

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くらら(プロフ) - 椿さん» 読んでくださりありがとうございます。そして申し訳ありません。大事な部分なのに非公開になっていて今ちょっとびっくりしました。多分物語の展開が読みにくかったんじゃないかと。大変申し訳ありませんでした。私もこの二人がいつまでも幸せでいることを望んでます^ ^ (2021年10月3日 20時) (レス) @page26 id: f815a3c4d3 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - 完結おめでとうございます。1本の映画を見たような、情景が浮かんできて、お話の世界ではあるけれど、二人が幸せであるようにと願うばかりです。91話が消えてしまっているようで、また読めたら嬉しいなと思っています。 (2021年10月3日 19時) (レス) id: 016a2653a3 (このIDを非表示/違反報告)
くらら(プロフ) - ひなたさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。今週には完結します。どうぞエンドロールまでお楽しみいただけますよう、がんばりますね! (2021年9月28日 21時) (レス) @page16 id: f815a3c4d3 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - くららさんのお話大好きです!涙が止まりません! (2021年9月28日 20時) (レス) @page15 id: 62306c8a0e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Clara | 作者ホームページ:https://www.instagram.com/st.clara.6/?hl=ja  
作成日時:2021年9月20日 20時

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