4日目 ページ4
「こんにちは」
「よく来るね」
「だって総悟、足折れてるじゃない。私のところに来れないでしょ」
「なんだって俺がそっち行く前提なんでぃ。ったく、あんたのせいで土方さんに怒られちまった」
「へえ、誰？」
「俺が殺したくて仕方ない男。俺の大事なもん全部持ってっちまいやがったクソだ」
「いいね。面白い」
「…さては、結構エグイ映画がお好みだろ」
にやにやしだした総悟に、やはり昨日と同じく椅子に座って総悟の隣にいる彼女は困ったように眉を下げた。始めて見る表情だ。しかし微笑みは変わらずそこにある。
二人きりの時は、初めて窓から見たような無表情はしない。
「怒られるから見たことない。でも好きだと思う。そっち方面の小説はよく読むし」
「ふーん…偉い生まれも大変だねぇ」
「うん」
「だから否定しねぇのもムカつくって」
「本当のことだからね。でも、この世に産まれて、何もないまま消えるくらいなら大変な方がいいな」
彼女はどこか悲しそうに窓を見た。今日は晴れている。しかしまだ残っている雪で小児病棟の子供たちが遊んでいて、彼女の居場所はなさそうだ。
「誰かの心臓になれたら。誰かのために死ねたら。どうせ藁人形みたいに脆いんだから、本当に人形になったって構わない」
「…俺ぁ…誰を犠牲にしても、生き残って、最期まで立っていたいね」
「いいね。その時は犠牲になって、君の盾になりたい」
「冗談だ。本気にすんな」
「わかりにくいよ」
笑う彼女は時計を見て、椅子から立ち上がった。
「ごめんね。今日は2時から検査だから。またあとで」
「おー、血抜かれ過ぎて死ぬなよ」
立ち上がった彼女は、今日はスリッパを履いていた。出た直後、看護師に向けて「こんにちは」と彼女の挨拶が聞こえた。足音が遠ざかっていく。
総悟はぼふんとベッドに体を横たえた。本来は絶対安静なのだが、これくらいいいだろうと彼の独断で起きたり寝たりしている。腹筋くらいできればよかったのだが、流石にそれは骨に響く。
「おいザキぃ」
「…」
「気配でバレバレだぜ、出てきてから殺されるか、殺されてから出てくるか選べ」
「それどっちも殺すじゃないですか！！！！折角見舞いに来たってのに…何です？」
「さっきの女、調べて来い。今日中」
「え！？！？そんな急な」
「早くしろその隊服半袖短パンにされてーか」
「…はいはいわかりましたよ！人遣い荒いんだから！」
山崎が扉を出ると、看護師に「埃塗れで病院にくんじゃねーよ地味顔！！」と怒鳴られていた。
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ソーサラー(プロフ) - たたさん» ありがとうございます！ (2021年11月11日 12時) (
レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
たた(プロフ) - あとがきの言葉を含め、とっても素敵なお話しでした。😌 (2021年11月8日 13時) (レス) @page49 id: 3fb8fe7daf (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ☆さん» ありがとうございます。褒められて調子に乗らないように、頑張ります。 (2021年8月17日 0時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 表現の仕方が丁寧で、神秘さと儚さ、知的さを持ち合わせていながらどこか子供のようにあどけない夢主ちゃんの魅力がたっぷりと伝わってきました。とても好きです…。無理なさらず頑張ってください！応援しております！ (2021年8月16日 13時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ことにゃさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2021年8月2日 22時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソーサラー | 作成日時：2021年7月22日 23時
