沖田総悟と病室101

25日目 ページ25

松島風介は俗にいうイケメンだ。遊女ですら彼を見ては頬を赤く染めるような、美しい顔立ちをしていて、その出で立ちはまさに宗教画そのものと言ってもいい。
そんな彼も美しいものが大好きだ。自身が映った鏡や、計算された黄金比になぞらえる武骨な兵器に船。そして、遺伝子欠陥とされるアルビノ。
チンパンジーでアルビノの子が産まれれば惨殺され母はいじめに遭うという。まさに社会的弱者。しかしそれは猿の話。九石榴Aはその美しさと洗練された頭脳を持ち合わせており、それを、目の肥えた風介は美しいと思い、一目見て欲しくなった。
絢爛な調度品と衣服に身を包んだ彼女を、その部屋に置いておきたい。それはドール的な独占欲。
天人の汚らわしい宇宙海賊の幹部が首を傾げつつ、鼻で笑う。
「あんた、それじゃあ、その女のために俺達から金を巻き上げようってのか」
「巻き上げるだなんて。取引じゃありませんか。僕らはあなたに武器を与え、あなたは僕らに金を与える。その使い方は互いにあずかり知らぬところ」
結婚式は必要ない。必要なのは、彼女のためのドールハウスだけ。
ああ、はやく、待ち遠しいな。

「総悟、イカサマした」
「してねぇよ」
「したしたした。絶対した。…あ、ほら、袖にA」
Aは総悟の袖からハートとスペードのAを抜いた。これでフルハウスを狙っていたらしい。
「昨日は弟と何を話していたの？」
「あ？」
「取らないでね、私のだから」
トランプをシャッフルする。随分手慣れた手つきで、彼女の器用さも相まって舌を巻く。俯きながら、いつものように微笑みながら、やはり彼女の感情は掴み難く計りかねる。笑っているしかないのだろうというのは、総悟にも察しがついた。
「…会社の情報は開け渡すが、とっちめるのは両親だけにしてくれってさ」
「へえ」
「あんたは病院暮らしで関係ないし、そりゃ不公平なんだそうだ」
「だろうね」
「兄弟は片方が出来が悪いともう片方は出来が良くなるそうだが、あんたらの場合はどうなんだか、俺には分からねぇな」
「そりゃ護清十郎のほうが出来が悪いよ。この世はお金だ、私は金を生み出せるだけの才能があるけれど、護清十郎にはない」
Aは頬杖をついて、総悟の頬に張り付いているガーゼを撫でた。優しく、触れるだけ。
「あんたも大概でさぁ」
「まあね。護清十郎の言葉は気にしないで、好きにしょっぴいたらいいよ」
平気そうに笑って、それを暗に伝えてくる。
普通なら次期社長も逮捕の対象だろう？と。

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