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22日目 ページ22

母に愛されていないと知ったのは、彼女の目がそう物語っていたからだ。
父に捨てられそうになっていると分かったのは、彼の顔がそうしたいと物語っていたからだ。
誰も悪くない。これは天がAに与えた才能であり、罪であり、罰だった。母はただ産んだだけだし、父はただ母と営んだだけに過ぎない。
Aは、それに絶望することは無かった。当然だと思って受け入れていた。どんなにぞんざいな扱いを受けても、両親を嫌うと共に愛していた。それは寧ろ呪いと言ってもいい。子供が生まれたが故に纏わりつく、永遠の鎖。
弟は両親と同じようにAを嫌おうとしていたし、きっと嫌いなのだろう。Aも彼を羨ましく思う一方で愚弟だと思っている。それでも両親と同じく彼を愛していた。それは、弟も同じらしい。もっとも、彼の場合は両親が彼を上手に愛せなかったせいだろうが。
瓦解した家庭環境を、普通の子供が受け入れられるはずもない。彼が病院に逃げ込んで来て、自分をひたすら罵倒し、号泣する日は少なくなかった。
その罵倒を、愛おしいと思う頃には、彼は孤立していた。そしてその孤立した彼をますます愛した。憐憫、しかし日焼けした肌を妬ましく思った。
彼に乗じて揶揄ってやると、これまた大声で泣いて、罵倒するのだから嬉しくなった。最後には「もっと賢くなっておいで」と釘を刺して病室から追い出した。わんわん泣く彼が好きでたまらない。
誰かと遊んでいると割りこんで来て悪口を言ったが、やはり負けて、泣きながら走って去っていった。喋るだけならAは誰にも負けない。両親が手を焼いて叩きたくなるくらいには。
あなたが愛しているのは自分で、私じゃないでしょう?でも私はあなたを愛していますよ。
そう言い放った瞬間に母に思い切り平手打ちされたことは今も忘れない、その時の彼女の顔と言えば、茹蛸のように真っ赤で、思い出しただけで笑えるのだった。
眠れず目を開ければ真っ暗で、昨日よりかは回復した体を起こし、102に向かった。扉を開けて、ひたひたと足音を立てれば、「何の用だ、もう面会時間は終わってるぜぃ」と総悟の気だるげな江戸っ子訛りが聞こえた。
総悟の言葉に何も返さず、Aは彼のベッドの中に入って、横になった。
「おい」
「ごめんなさい、少しだけ」
総悟の心臓の音、肺の音、熱、そのすべてを覚えるように触れ、抱きしめる。彼の匂いも、忘れないように。祈るように縋る。
何も信じていないくせに、何を祈るのか。

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ソーサラー(プロフ) - たたさん» ありがとうございます! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
たた(プロフ) - あとがきの言葉を含め、とっても素敵なお話しでした。😌 (2021年11月8日 13時) (レス) @page49 id: 3fb8fe7daf (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ☆さん» ありがとうございます。褒められて調子に乗らないように、頑張ります。 (2021年8月17日 0時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 表現の仕方が丁寧で、神秘さと儚さ、知的さを持ち合わせていながらどこか子供のようにあどけない夢主ちゃんの魅力がたっぷりと伝わってきました。とても好きです…。無理なさらず頑張ってください!応援しております! (2021年8月16日 13時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - ことにゃさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2021年8月2日 22時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソーサラー | 作成日時:2021年7月22日 23時

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