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「…花京院…と言ったな、確か」
屋根を飛びまわっている時、給水タンクから水が零れていたのを認識した。そこに居た死体は、承太郎様のお傍にいた優秀そうな顔をした好青年だった。もう、ただの肉になってしまったが。
「どてっぱらに穴を開けられて死んだのか」
折角の承太郎様とのご友人、無礼は働けない。
「んお、重い」
何とかしてウォッチ・ドッグの背中に乗せて、カイロの路地裏に寝かせた。これだけ濃い血の匂いがしていたら、死体漁りもそう手を出すまい。
彼に手を合わせて、安らかに眠れと祈った。
「ああ」
そうだ、確か、あの歌。
あの歌を初めて聞いたのは、赤子が死んだときだった。
初めて抱いた赤ん坊だった。名前がつく前に、水に当たって死んだ。
顔を上げて、再び屋根の上に駆けあがった。感傷に浸っている場合じゃない。
時計塔が破壊されている。ここでひと悶着あったのは違いない。では、次はどこへ行ったのか。
「…新しい能力、何処までできるか試してみようか」
見下ろせば人、酔っ払いだ。サウサンに使う前にテストしてもいいだろう。
こんなに残酷なことができるのは、スラムの匂いに中てられたからだ。目を細めて、風邪が揺らす金髪がちらついてもその男を認めた。
「奪え、」

空間の強奪、それはどこまでが空間だ?例えば、視界。見えるものを空間として認識する。

脳、神経回路…これは複雑すぎて私が扱えない。

では、内臓の中…これは、肺や心臓、血管が使えそうだ。いや、眼球の中も奪えば視界を失くせるし、鼻孔を奪えば気にすることなく毒殺できる。

いやそんなこと必要ないけど…しないとは言わないけど。

人体にある空間は、何処までが空間だ?

「あっ」
目下の人間が狂ったように笑い転げ、頭を思い切り石で殴り始めた。
しまった、干渉しすぎると精神異常を起こすのか。
「おいあんた!何やってんだ!!」と親切な人間がその男を止めに入るが、男は最後、ナイフで首を掻っ切った。思わず目を背けた。
「自分でやったこととはいえ…うえぇ…サウサンに試す前で良かった…」
同時に複数人はできないらしい。精々一人。十分だ。
「…ジョセフ様にはお見せできないな」
再び目的を果たすため、屋根の上を駆け回り始める。掴んでいないと落ちそうだ。舌を噛まないようにしないと。
車が突っ込んだレストランや、煙を上げる人体が目に留まった。全く、あいつは人をなんだと思っているんだ。
「…って、私もかな?」
わん、とやや低い声が耳を掠めた。

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☆夢腐女子☆(プロフ) - 苗字の欲張りセットは笑いましたw面白かったです!他の作品も頑張ってください!(*^^*) (2021年5月30日 7時) (レス) id: a9ee6f3cf2 (このIDを非表示/違反報告)
3a - めっちゃ面白いです!!続きが気になります!頑張ってください! (2021年5月16日 3時) (レス) id: 59e168782f (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - 靜藍さん» ありがとうございます!頑張って完結させますね!! (2021年1月2日 16時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
靜藍(プロフ) - め、めちゃくちゃ面白いですッッッ!!!前作?のディオの妹の話もそうですが、私のドタイプのお話でした!!(*>∇<*)続きとても楽しみに待ってます!!! (2020年12月6日 19時) (レス) id: 114c5f5474 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソーサラー | 作成日時:2020年10月22日 23時

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