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例えば、アナスタシアのように大人しく弱々しく、如何にもなこの細首を片手で折ることができたなら。例えば、猛犬のような牙を持たず、初めから愛を知って生きていたら。例えば、例えば、例えば。こんなに強欲に人を救おうとするキリストを馬鹿だと嘲ることができたなら。
首を垂れて寝た彼女を静かに地面に置いた。こんな簡単に気絶してしまうのに、どうして自分にそこまで気を許して、愛していると宣うことができるのだろうか。
「おい」
DIOは物陰で小さくなっている少女に声を掛けた。汚いぼろきれを纏ったその動物は、DIOのこともAのことも知っている。
「この女を見ていろ、傍を離れるなよ」
「えっと…」
あと数分で日が落ちる。準備をしなければいけない。その準備に、この神はいらない。今から夜明けまでの間、ジョースターが死ぬまでの間は、神は唯一自分だけでいい。
赤いマントを翻して、彼はスラムの中に消えていった。そこはかつて自分が住んでいた貧民街の匂いに酷似していた。
「…この人、…生きていたんだ」
いつだったか、このメイド服を着た少女から財布を貰った。”自分を探している人間に出会ったら、ヴァニラ・アイスに殺されたと伝えろ”と汗を滲ませて苦しそうな顔で訴えたあの日の女神。
「綺麗な髪」
この地域には珍しい金髪は、僅かに乱れていた。睫毛まで金色。まじまじと見てしまう。髪だけでなく、容姿も可憐だ。鼻筋の通った顔立ちで、一体いくつなのか分からない。分からないくらいには子供らしくはない。
修羅の道を歩んできたのは容易に想像できる。自分の死を簡単に受け入れようとするのは、常に自分の身の周りに死があった人間の特徴だ。
足が無くなっている。なのに、こんなに美しい。
「…私の名前、覚えてますか」
ぼろきれを体にかけて、夜が冷えるこの地域に彼女の腹が冷えないことを祈った。
「サウサンだろ」
「え」
「百合って意味だ」
「…起きてた、んですか」
彼女は悪戯っぽく笑った。犬歯が尖っていて、ああ、彼女は、狂犬だ。荒れた手がサウサンの頭に触れた。
「また君にお世話になってしまったね」
「いや、大したことは…」
わん、と耳に馴染んだ鳴き声が聞こえた。ウォッチ・ドッグがそこにいた。丁度いい。サウサンを巻き込まないように速く離れないと。
「大きな犬だね」
「…あんだって？」
「え、ああ、ごめんなさい。それに珍しい犬種なのかな。見たことがない」
サウサンは柔らかく、幼い笑みを浮かべていた。
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☆夢腐女子☆(プロフ) - 苗字の欲張りセットは笑いましたw面白かったです！他の作品も頑張ってください！(*^^*) (2021年5月30日 7時) (
レス) id: a9ee6f3cf2 (このIDを非表示/違反報告)
3a - めっちゃ面白いです！！続きが気になります！頑張ってください！ (2021年5月16日 3時) (レス) id: 59e168782f (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - 靜藍さん» ありがとうございます！頑張って完結させますね！！ (2021年1月2日 16時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
靜藍(プロフ) - め、めちゃくちゃ面白いですｯｯｯ！！！前作？のディオの妹の話もそうですが、私のドタイプのお話でした！！(*>∇<*)続きとても楽しみに待ってます！！！ (2020年12月6日 19時) (レス) id: 114c5f5474 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソーサラー | 作成日時：2020年10月22日 23時
