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「大丈夫だ、俺がなんとかする」
「ちょっと」
「こいつを頼んでいいか。あまり死体を見せたくない」
「ねえ」
「夜明けまでここで待っててくれ」
「待ってよ!」
涙で目が真っ赤に晴れてまだ泣きじゃくるAに、承太郎は自分の上着を渡した。そしてサウサンからシルクハットや古ぼけたコートをほぼ奪い取る形で受け取った。それら、特にコートをじっと見てから、彼はDIOの死体を引きずる。
頭が爆発して、既にその体は血を流すだけの袋。司令部が壊れたためその体は吸血鬼の血を持っているものの、それ自体に脅威はない。
サウサンが彼の服を掴もうと手を伸ばすが、Aがあまりにも強く掴むから。彼女は顔だけ顰めて、彼女の体を抱きしめた。承太郎は振り向かなかった。
二人取り残された。朝焼けが這い寄る水平線。
「…サウサン…」
か細い可哀想な少女の声。寒くないように二人で引っ付いて、承太郎の学ランに一緒に入る。
「私を、眠らせて」
「でも」
「大丈夫。ちゃんと帰ってくるから」
「…」
「まだやらなきゃいけないことがあるんだ。DIOに言わなきゃいけないことが」
「そう…なら、いいよ。見送ってあげる」
クラゲのような羊のような、ふわふわしたものがAの周りを浮遊した。
「ウォッチ・ドッグで占領して。そうすればもうAちゃんのもの」
微睡む意識の中で聞こえたサウサンの声の通り、迷路を強奪した。

「やってくれたな」
「…」
「こんなところに閉じ込めてなんのつもり、」
「お前私の主人殺しといて何言ってんだクソ虫!!!」
Aは飛び掛かってDIOの顔をひっぱたいた。風船が破裂するような音が響く。先ほどまでのセンチメンタルメイドはどこにいったのやら。話が違う。
DIOは目を見開いてもう一度彼女を見ようとするが、またひっぱたかれた。それから、彼女は優しく笑ってDIOの頭を抱きしめる。
「ふふふ、ふん、ザマぁ無いなDIO。こんな小娘の支配下に置かれ、死ぬこともできないんだ。暇つぶしもない。ここが地獄だ。へへへへ」
「な、」
「生きててよかった」
彼女の腕に力が入る。
「死ななくて、良かった」
帝王ともあろうこのDIOが、なんて、もう、言わないで。
紅茶も無いし、クッキーも無い。ベッドも無い。朝も夜も無くなった。でも、なんとなく、このキリストになり損ねた聖女のような少女なら、そんなもの無くても自分と同じ時間を過ごしてくれると思った。
DIOの大きな手は彼女をすっぽり覆いこむように抱き返した。
「もう、離れるなよ」

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☆夢腐女子☆(プロフ) - 苗字の欲張りセットは笑いましたw面白かったです!他の作品も頑張ってください!(*^^*) (2021年5月30日 7時) (レス) id: a9ee6f3cf2 (このIDを非表示/違反報告)
3a - めっちゃ面白いです!!続きが気になります!頑張ってください! (2021年5月16日 3時) (レス) id: 59e168782f (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - 靜藍さん» ありがとうございます!頑張って完結させますね!! (2021年1月2日 16時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
靜藍(プロフ) - め、めちゃくちゃ面白いですッッッ!!!前作?のディオの妹の話もそうですが、私のドタイプのお話でした!!(*>∇<*)続きとても楽しみに待ってます!!! (2020年12月6日 19時) (レス) id: 114c5f5474 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソーサラー | 作成日時:2020年10月22日 23時

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