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「あはははは!歌でも歌ってやろうか、承太郎!いい気分だ、実に、いい気分だ!!」
「DIO…!」
「んっんー?そんなに怒るんじゃあない、すぐに同じところに送ってやる。ザ・ワールド!」
時が世界を止める。呼吸すら失って無音の世界。そうなる前に承太郎は距離を取るが当然のように間に合わない。しかし、少しずつ、少しずつ、動いてきている。眼球の筋肉が跳ねる、血液が躍る。
「…このDIOのものだ」
DIOの上機嫌な顔は崩れて、苦虫を嚙み潰したように顔に皺が寄る。
「Aも、この世界も、全部」
ぎりり、と奥歯が鳴った。
「全部を手に入れれば、埋まる。この隙間も、欲しいと叫ぶ声帯も。あいつが言ったのだ、愛してやると、愛を教えてやると与えてやると」
12歳の少女に求めるには重すぎる。むしろ与えられてしかるべき年齢の少女にどうしてそんなものを求めてしまうのか。一番不快なのはそれに共感できてしまう自分自身だった。
彼女はきっと与えてくれる。欲しいと言ったものを全力で与えようとする。スラムを治めていた名残なのか、そうやって与えることによってのみ生きることを教えてきたのだろう。
Aは底知れぬ優しさの持ち主だ、それと同時に理解できないくらい狂っていて、自分の正義のためなら悪道さえ貫ける。それに付け込んだのだ、こいつは。
許せるとか許せないとか、殺すとか殺さないとか、何も考えなくていい。ただ、どうやって分からせるかだけぼんやり見つめていよう。
気づけばDIOの顔にめがけて拳を振るっていた。

「は?マジでどうなってやがんだ」
承太郎とDIOの戦いを隠れて見つめていた。しかしあっちへきらきらこっちへきらきら、一瞬で移動して、光の速さで動いているのかと思うほど。
時折看板が一瞬で凹むところを見ると、どうも光速で動いているというわけではなさそうだ。
「…承太郎様のスター・プラチナは…ジョセフ様よりかなり後だったか」
承太郎は特にここ最近で発現し、それを聞いた直後にはエジプトに居たので彼の幽波紋の概要は効いていない。しかし様子を見るに、DIOとほぼ同じタイプ。
固唾は飲み込めないまま拳を交わす二人を見ていた。見るしかできなかった。離れれば追いかけ、視界に留め続けることもできない火花散る戦い、自分が入れば両方の視線を奪うことはできるだろうが、それ以上に何か有益なことが起きるとは思えない。
「悔しいなあ」
壁にめり込んだ承太郎に手に汗握りながら、食い入るように見つめていた。

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☆夢腐女子☆(プロフ) - 苗字の欲張りセットは笑いましたw面白かったです!他の作品も頑張ってください!(*^^*) (2021年5月30日 7時) (レス) id: a9ee6f3cf2 (このIDを非表示/違反報告)
3a - めっちゃ面白いです!!続きが気になります!頑張ってください! (2021年5月16日 3時) (レス) id: 59e168782f (このIDを非表示/違反報告)
ソーサラー(プロフ) - 靜藍さん» ありがとうございます!頑張って完結させますね!! (2021年1月2日 16時) (レス) id: 1368eb388d (このIDを非表示/違反報告)
靜藍(プロフ) - め、めちゃくちゃ面白いですッッッ!!!前作?のディオの妹の話もそうですが、私のドタイプのお話でした!!(*>∇<*)続きとても楽しみに待ってます!!! (2020年12月6日 19時) (レス) id: 114c5f5474 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソーサラー | 作成日時:2020年10月22日 23時

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