- ページ8
ut side
射撃場の端には訓練の合間に談笑したり、休憩する用のテーブルと椅子が何組か置いてある。午前中ずっと銃を持ち続けた腕を休ませるため、そこにAちゃんとシャオロンと三人で腰掛け、飲み物片手に向かい合った。
銃声が響く射撃場の中、先程、装填した十発の銃弾全てを見事的に当てたAちゃんは特別喜びもせずに、ひとつだけ溜息を漏らした。俺を食堂で出迎えてくれたあの笑顔は何処へやら、シャオロンが注いだオレンジジュースのグラスを見つめる彼女は、何やら浮かない表情を浮かべている。
「私、コネシマさんに嫌われてるんでしょうか」
…またひとつ、息を吐いたAちゃん。
俺と顔を見合わせたシャオロンは困ったように笑った。どうやら彼女にかける言葉を決めかねているようだ。
「どうして嫌われてるって、思ったん？」
大体の理由に見当は付いているけれど。きっとシャオロンが聞きたいだろう質問を投げかけてみる。
「今朝、食堂の前ですれ違う時に怒っていたように見えたから…私、何かしちゃったのかも」
俺とシャオロンで器用に敬語を使い分けるAちゃん。その度に不服そうな顔をするシャオロンに罪悪感は募るけれど、少なからず悪い気はしないので俺はきっと愉悦に浸った表情をしているのだろう。
「んー…Aちゃんはさ、どうしてコネシマと仲良くなりたいって思ったん？」
「え？私は無理にコネシマさんと仲良くなりたい訳じゃ…」
「じゃあ、嫌われてても気にする必要ないんとちゃう？」
これは俺が知りたい質問。素直に思ったことを口にしてみると、案の定Aちゃんは答えを出すのに苦労している。「何でだろう…」と腕を組み眉間に皺を寄せて考え込む姿が愛らしい。
ちらと横目でシャオロンを捕らえると此方も眉を寄せ眉間に皺を作っていたが、Aちゃんの愛らしさとは程遠いほどの凄い形相だ。大方此方はコネシマの話題が出てきた事に思い悩んでいるのだろう。
二人とも脳内で考えている事が手に取るように分かるほど、顔に出る。二人が百面相を繰り返すその光景が面白くて、俺は無神経にも綻びそうになった口元を隠すようにアイスコーヒーを飲んだ。
手元にあったグラスからカランッと音を鳴らし、俺がアイスコーヒーを飲み終えた頃。
俺の質問以降、誰も言葉を発しない中で先に口を開いたのは、今まで固く組んでいた腕を解いたAちゃんだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 180人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
marica(プロフ) - 雨神朔夜さん» 雨神朔夜さん初めまして。とても励みになるコメント、有難うございます！更新頑張ります！ (2018年7月24日 22時) (
レス) id: 77a5478ad4 (このIDを非表示/違反報告)
雨神朔夜(プロフ) - 時間を忘れて一気読みしてしまいました…！とっても面白かったです…！今後の更新も、陰ながら応援しております…！突然失礼しました！ (2018年7月17日 1時) (レス) id: 770040a5d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：marica | 作成日時：2018年7月16日 22時
