ずっと待ってる。続【YOI】

38時間 最終回 ページ22

私は勇利が眠ったあと部屋を出て自分の部屋に戻った。ヴィクトルにメールで「勇利は寝たので部屋に戻ってきても大丈夫」と伝えた。返事は想像するだけで面倒になることがわかったので電源を落とす。

部屋に戻り、化粧を落としてシャワーを浴びる。
楽な部屋着に着替えて明日帰国するので荷物をまとめる。
明日には出国する。日本に帰ってからはまず仕事。そして身の回りの整理だ。いつロシアに渡るのかは分からないが、徐々に荷物を減らしておいて損はないだろう。元々私は居候の身だし、ロシアに行くタイミングで勝生家を出てもいいかもしれない。

ちょっとだけ寂しい。
勝生家にお世話になって数年しか経っていないが、実家のような感覚に陥っていた。
父が亡くなり親戚の家に住まわせてもらっていた時は、こんな風に思わなかったのに。

「…好きだなぁ…」

みんな、大好きだと胸を張って言える。まるで本当の家族のように接してくれた温かい人たち。利也さんと寛子さん、吉野さんはまるで自分の子どものように愛してくれた。真利さんやミナコさんは妹のように可愛がってくれた。優子さんや豪さんは昔からの友人のように一緒に笑ってくれた。3つ子ちゃんたちも、最初は遠慮がちだったが今では「AちゃんAちゃん！」と懐いてくれている。

そして、勇利。


ー一緒にご飯食べたいしカツ丼も作ってほしい。一緒に散歩したり、まだまだやりたいことがいっぱいある。

ー結婚して。A


どれだけ、嬉しかったことか。
どれほど、待っていたことか。

誰にも分からないだろうし、教えようとも思わない。待って待って、待ち続けて。その待ち人が来た時の感覚。

勇利に初めてあって、恋に落ちた時の自分に教えてやりたい。
勇利と離れてしまっても、5年間連絡を取らなくても、彼は私の事を覚えていること。
彼の家で働く事になった時、気持ち悪いと思われるとドキドキしていたが、実は彼も好きでいてくれているということ。
弱気そうに見えて、負けず嫌いで、とても男らしいこと。
私の料理を美味しいと食べてくれること。

信じて待っていて良かった。やっとそう思えた。
そう思わせてくれた。
これからも、勇利のためになら、いつまでも待てる気がする。


「待ってるよ。…ずっと、待ってる」



さぁ。これからまた忙しくなりそうだ。




ーーーーEndーーーー

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