ずっと待ってる。続【YOI】

31時間 ページ2

長い旅を終え、バルセロナに到着した。対策はしていたものの、やはり時差ボケにはなってしまうのは仕方ない。

ホテルの部屋は勇利とヴィクトル、そして私は1人部屋…ではなく。

「A〜！久々だ！」
「大和！久しぶり。まさかこんなに早く会えるとは思ってなかった」

クリスの友人の大和千紗だった。選手ではない私たちは比較的男性陣よりも荷物が少なく、部屋が余計に広々としたような感覚だ。

「こんな寒いのに、クリスってばプール行ったんだよ？馬鹿だと思わない？」
「それならうちの子もいってるよ」
「…ヴィクトルも？勝生くんは？」
「勝生勇利くんは時差ボケスリーピングビューティと呼んであげて」

私も多少の時差ボケがあり、ベッドで少し寝たらマシになった。一方勇利はホテルに着いてからというものの、ベッドに入ったきり出でこないのだ。そこで名付けられたのが「時差ボケスリーピングビューティ」。

私と大和はルームサービスで夕食を軽く済まし、入浴を済ます。大和は海外生活で慣れたシャワーで済まし、私は湯船にわざわざお湯を張った。
お湯が沸いた頃、隣から勇利の大声とドタバタと騒音が聞こえる。気になったので、大和と一緒にとなりの部屋を訪ねた。

「勇利？どうしたの？」
「A〜！オフロ、イレテ〜！」

ヴィクトルから聞こえてきたカタコトの日本語は、私がちょっとずつ刷り込んでいるものだった。ヴィクトルは水着にタオルを羽織っただけで「サムイサムイ」と言っている。

「私たちの部屋、今からお湯入ったところだから先にヴィクトル入る？」
「いいの？！Aも一緒にはいる？」
「あほ。クリスと入ってきていいよ」
「さすがの僕でも狭いバスタブにヴィクトルと収まるのは嫌だなぁ」

おいで、とヴィクトルの手を取ると素直に手を握り返してきて私の後ろをついてきた。
こういう所だよなぁ、27歳児って。

ふ、と勇利を見るとこれまた微妙な顔をしていた。クリスと大和も勇利の表情に気づき、思わず笑っている。

「勇利も一緒に入ってくれば？」
「そういうのいいってば、やめて」

少し低めの声でクリスにそういった。思ったよりも不機嫌だな。

「勇利」
「なに、っ！」

ちゅ、と勇利の唇を奪ってやった。

「いい子で待ってて」
「……はぁ？！」

日本語で言ったそれは、ヴィクトルもクリスにもわからない。首をかしげた2人と顔を真っ赤にする勇利と大和。

「ヴィクトルいくよ」

出で行ったAたちの後ろ姿をただ眺めるしかなかった。

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