盗賊.53 ページ4
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「大丈夫だ
敵の何人かは痛手を負った、加勢がくるまで動くまい」
クロロは鎖で拘束され、車に乗せられていた。
そんな状況下にも関わらずクロロは只々クラピカを静観していたのだった。
「何を見ている」
「いや。鎖野郎が女性だとは思わなかった」
「私がそう言ったか？見た目に惑わされぬことだな」
クラピカは言葉を続ける。
「それより発言には気を付けろ。何がお前の最後の言葉になるかわからんぞ」
「殺せはしないさ。大事な仲間が残ってるだろう？」
「挑発を受け流せるほど、今私は冷静じゃない…！」
カッとなるクラピカをレオリオが宥める。
センリツは殺伐とした空気に頬に汗を伝わせていた。
「それに、あの娘の占いにもこの事は出なかった。つまりこの状況は予言するほどのこともない取るに足らない出来事という訳だ」
「貴様……！」
「もう１度言ってやろうか？俺にとってこの状態は昼下がりのコーヒーブレイクとなんだ変わらない平穏なものなのだ」
刹那、クラピカはクロロの頬に拳を振るったのだった。
それでもクロロは怯むことなくクラピカを嘲笑うように口角を上げる。
「！」
それに気付いたクラピカは感情のままに拳を奮い続ける。
「冷静になれ！らしくねーぞ！
状況は五分！何にも進展してねーんだ」
「五分？お前もとんだピント外れだな
前提がまず間違っているよ、お前達は」
二人を見据える。
「俺に人質としての価値などない」
「これ以上下らん戯言を並べるな」
「嘘じゃないわ、彼が言ってるのは全て本当」
クロロの心音は至って平常。
死への恐怖も微塵もなく、死を受け入れている音だった。
「もういや！もう聞きたくない！」
そんな音に恐怖を感じ、耳を塞ぐ。
そんな様子を気にする事なく瞳を閉じ、ある女を思い浮かべる。
「……………A」
心地良さそうに心音に耳を傾ける女を。
「お前らに忠告だ」
クロロは瞳を開く。
「あの女がいる限り、お前らの計画は無駄になる」
「なに！？」
「約束を交わしたからな」
突然車が大きく揺れたのだった。
窓ガラスが割れ、破片が散らばっていく。
「！」
銀髪が月光を反射する。
『クロロは返してもらうよ』
そこにはAがいたのだった。
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作者名：ゆき | 作成日時：2024年3月22日 12時
