盗賊.50 ページ1
着信音が響く。
「キルア?」
蜘蛛を尾行しているキルアからの連絡だった。
ゴンは携帯を耳に当てる。
「あの女がいたぜ。だけど仲間と一緒だ、7人で行動してる。その中にあのチョンマゲもいるぜ」
「げっ」
「あと二人俺達が昨日見てない奴がいる」
視線の先には逆十字の男と肩を並べる銀髪の女がいた。
その男女には他の団員達とは違う風格があった。
「リーダーらしき男と姉貴だ」
頬に汗を伝わせる。
敬愛する姉と敵対関係にあるからだ。
「………勘弁してくれ」
キルアは前髪を掻き乱す。
Aを欺き作戦を遂行するのは至難の業だ。
「ゴン、今すぐクラピカと代われ」
まずあの姉貴を出し抜ける
「作戦を__________」
刹那、青い瞳に捉えられてしまったのだった。
Aは大きく口元を歪める。
「どうした?」
Aの笑みに気付き、視線を向ける。
『いやー楽しいなあって』
「警戒を怠るなよ」
『はーい』
常に行動を共にしていたが特に目立った動きはなかった。
だが、彼の勘がそう告げていたのだった。
「(………そしてコイツ自身も気付いてる)」
Aもクロロが勘付いていることに気付いていたが、お互いに行動を起こす事なく冷戦状態が続いていた。Aは拷問にかけられようと情報を吐くことはないだろう。
そしてこの女が大人しくやられるはずがない。
「(最後の瞬間まで
こいつの恐ろしさは俺が一番知っている。
ならば野放しにするより監視下に置いておく方が抑制もできる為好都合だ。
「………我ながら苦しい言い訳だな」
『クロロ?』
「雨が強くなってきたな」
話を逸らしつつAの頬に手を当てる。
雨で濡れた彼女の肌は氷のように冷たかった。
「冷たいな」
『クロロはあったかいね』
彼の手に擦り寄る。
大勢の人々を手に掛けてきたこの手は優しく温かかった。
「!」
手の甲に唇を落とされる。
『いい
目を見開くと女は意地悪に笑った。
「………戻ったら覚えておけ」
この女には掻き乱されてばかりだ。
「さっさと面倒事を片付けるぞ」
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作者名:ゆき | 作成日時:2024年3月22日 12時