悪役.14 ページ15
「経験……？」
キョトンとする緑谷にAは頷く。
『緑谷だって自身を傷つけないように力の調整をするでしょ？』
「はい」
『あれは一度でも痛みを経験してるから出来ることだね
私は今回緑谷と同じ経験を得たんだよ
だから私は________』
________もっと強くなることができる
Aの表情や言葉に緑谷だけでなくオールマイトもゾクリと背筋を震わせたのだった。Aというヒーローは果てしない努力の上に立っているのだと、緑谷は気付かされる。
「……どうしたらあなたみたいに強くなれますか？」
『ふふっ、緑谷の場合隣に師匠がいるじゃん』
「いや……その！そうなんですけど……、A先生の意見も聞いてみたくて」
肩をくすめて笑うAに緑谷は誤魔化すように頬を掻いたのだった。A先生って僕たちみたいに笑ったりするんだ、初めて見た。
一頻り笑ったあとAは咳払いをし口を再び開く。
『もちろん経験も大事だけど、一番は憧れを忘れないことかな』
「憧れ………ですか？」
『うん、憧れ。実際、プロになった今でもヒーローという職業に憧れてるからね』
そう語るAの表情は真剣そのものだった。
緑谷はAの話に頷く。
『憧れを手に入れたら終わりじゃなくて、もっとその思い描いていた憧れにどうやったら近付けるか考えるの』
「………ヒーローになったら終わりじゃない」
『そう、ヒーローになったら終わりじゃない
なってからがスタートラインだよ』
Aはニコリと笑う。
『まあ、緑谷が良ければ特訓でも何でも付き合うから言ってね』
「本当ですか！！？是非お願いしたいです！」
緑谷が深々と頭を下げるとオールマイトは「でも本当にいいのかい？」と頭に手を当てながら言ったのだった。
「そこまでしてもらって、君だって忙しいだろうに」
『いいのいいの、私自身の練習にもなるから』
「本当に君には頭が上がらないよ」
オールマイトは少し申し訳なさそうにする。
そして「私の弟子を頼むよ」とオールマイトも深々と頭を下げたのだった。
『もーやめてよ、大したことは出来ないから』
困ったように笑うAにオールマイトは頭を下げ続けた。Aの幼少期を知っているオールマイトだからこその行為だった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 313人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆき | 作成日時：2023年3月13日 23時
