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第57話【東條夏津】ページ8

「財布がないのっ！！」

ミコちゃんの叫び声に私の脳は一気に覚醒した……筈なのだが、すぐふわふわの脳に戻る。

「ふゎ？」

こてん、と首を傾げる私。今はたまごサンドを手にしている。

私がこんなことになっているのはお酒のせいだ。お水を飲み干して空になったコップに、近くにあったお酒を注いで飲んだのだ。苦くなかったからビールだと思う。

飲んだ瞬間クラッとした自分を抑え、正常を振る舞っているが所詮中学生だ。お酒には弱くて今、ちょっとヤバい。

「どーしたんミコちゃーん、って財布失えたんか、一大事やんかぁ」

いひひ、と笑ってミコちゃんを見る。

「ま、まさか……」

兄ちゃんが焦った顔で私を見た。直ぐ様私の額に手を当て、熱をはかる。

「あ、あんた……お酒飲んだやろ！？」

慣れきったはずの標準語も消え、関西弁を口にする兄ちゃん。

「ややなぁ、兄ちゃん大袈裟やってぇ。そこのヤツ飲んだだけで……」

「あっ、これ中身減ってる！これを飲んだんだよ！しかもこれ焼酎……」

焼酎。その名前を、私は知っている。

ーーいや、まさか、ね？あのアルコール度数の強い(？)お酒を私みたいな問題児の側に置く筈が……？

「あっ、これ、小次郎さんが飲んだ……！」

あったわこのやろう。

結局、私はその場で寝かされることになった。寝かされる、といっても眠らなくてもいい。寝転んで、水飲んで、頭を冷やせばいいらしい。

「みんなの会話には参加していい、と？」

「そういうこと、ただ絶対に起き上がらないでね、倒れちゃったら困るから」

「りょーかいしましたぁ」

私は寝転んで、天井を見る。

ーーああ、まだ夜は長いのになあ。