427 ページ27
「どしたの、まーちゃん。オムツ替えるだけだよ？」
智がそう言っても、雅紀の涙は止まらなかった。
その涙が甘えたい時と違って本当に辛そうで…
困った智がコールボタンを押すと、診察室にいた松本が来てくれた。
雅紀の様子を見た松本は、優しい笑顔で雅紀に話しかけた。
「まー、おしっこ出てるからおむつ替えような。俺が替えるよ。まーは大野さんと手繋いでてな」
涙を流す雅紀の瞳が小刻みに揺れていた。
雅紀は水分制限から来るひどい眩暈に襲われていたのだ。
「まー、眩暈で目が見えてないんだと思う」
松本が言うと、智は心配そうに雅紀の手を摩った。
時計を見ると、もうすぐ昼休憩の時間。
とりあえずオムツを交換し、櫻井に診察が終わり次第雅紀の部屋へ来るよう連絡。
「脚高くするよー、まー」
クッションを積み、その上に棒のような足をのせる。
その足は冷え切っていた。
「まー、寒い？」
反応がない。
「まーちゃん、寒い？」
智が耳元で言うと、雅紀は小さく首を横に振った。
感覚が鈍くなっていた。
「大丈夫だよ、まーちゃん。しんどいね」
顔もカサカサ。
「口拭こうね」
経口摂取をしていないとはいえ、身体が水分を欲せば喉が渇く。
尿は大量に出続け、喉の渇きは酷くなるばかりだった。
喉の渇きを少しでも癒す為、智は櫻井からのアドバイス通り、水に浸して絞ったガーゼで雅紀の口内を拭いていた。
唇が割れないようワセリンを厚く塗る。
「まーちゃん、あーん」
小さく開いた口にガーゼを巻いた指を入れる。
こうすれば昨日までは笑顔を見せてくれたのに、今日は一転して顔を歪めた。
「どうしたの、まーちゃん」
ガーゼを抜いて見てみると、ガーゼの端にうっすらと血がついていた。
見ると、口の横が割れてしまっていた。
「ごめん！ごめんね、まーちゃん。痛かったね…」
智の声にオムツを片付けていた松本は目をやった。
ゴム手袋を付け替え、側に行く。
「大丈夫、大丈夫。まー、薬塗るよ〜。痛くないからな〜。はい、終わり。終わったよー？」
薬を塗り終えても、涙がポロポロ。
「どうしたの、まーちゃん。しんどい？」
「痛いところあるか？まー」
何を聞いても首を小さく横に振るだけ。
しんどさを涙でしか伝えられないのかもしれない…
そう思った智は何も聞かず、雅紀の胸をさすり涙をタオルで拭いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 301人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いずみ(プロフ) - りささん» コメントありがとうございます。リクエストもありがとうございます。お話の流れの中で取り入れていこうと思います。もうしばらくお待ちください！ (2021年2月6日 18時) (
レス) id: 3797474e34 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 初コメです！ニノが智くんにすごく甘えるシーンをもっと見てみたいです！まーくんが何かあった時は甘えないとか！突然のリクエストごめんなさい (2021年2月3日 3時) (レス) id: da570d1084 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - あのひさん» 新しい仲間がまた出てきちゃいました！今後、また横山さんも出てくるかもしれないです。またよろしくお願いします！ (2021年1月29日 7時) (レス) id: 3797474e34 (このIDを非表示/違反報告)
あのひ(プロフ) - まーくんのおかげで、また新しい仲間が増えましたね！横山くんも元気かな〜？ (2021年1月25日 22時) (レス) id: 2bf0d880c6 (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - りんさん» 初コメありがとうございます！そんな風に言って頂けてとても嬉しいです。先程更新させて頂きましたので、そちらもよろしくお願い致します。 (2021年1月21日 23時) (レス) id: 3797474e34 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いずみ | 作成日時：2020年11月28日 0時
