300 ページ50
「雅紀くん、首回り全然荒れてないね。保湿剤とガーゼのおかげだね」
『ち…が……み……ん…な…』
「そうだね、大野さんや翔くんたちのおかげだよね」
雅紀が寝たきりになっていた時も、汗をかくたびに頭を持ち上げて首回りの紐を緩め、汗でかぶれないよう肌を拭き、保湿剤を塗って直接紐が当たらないようガーゼをあてがった。
1日で数回拭いたこともあり大変ではあったが、切開してからこれまで首回りの肌トラブルは1度も起きなかった。
部屋でチューブを外してから処置室に向かう。
「雅紀くん、吸引してチューブ取るね。少し苦しいよ」
『ケホケホッ…ケホケホッ…ケホン！ケホン！！……』
チューブを動かしたことで気管が刺激され、雅紀は強く咳き込んだ。
「まーちゃん、大丈夫大丈夫」
少し汗ばんだ手を握り、背中をさすった。
チューブが取れた孔からは、唾が流れ出てきた。
「オッケー。雅紀くん、ティッシュで押さえて。そうそう。よし！じゃあ、耳鼻科に行ってきて下さい。近藤先生がいらっしゃると思いますので」
「分かりました」
雅紀を車椅子に座らせ、2人で耳鼻科に向かった。
途中まではいつも通りだったのに、耳鼻科病棟の階に着いた途端に後ろに手を伸ばしてきた。
「うん？どうした？」
『ティッシュがベトベトになったから新しいティッシュちょうだい』
近藤の待つ2番処置室は、もう、すぐそこ。
雅紀の時間稼ぎが始まった。
まだ近藤に言われた時刻まで時間はある。
「はい、新しいの」
智は雅紀の気持ちに寄り添うことにした。
そっと手を握ると、緊張で手が冷たくなっていた。
「まーちゃん、不安なこと言ってごらん？」
背中をさすりながら聞く。
『先生の手元が見えそうで怖い…』
泣きそうになったのか、雅紀は目元を拭った。
「先生に頼んでこれつけてもいいか聞いてみるよ」
鞄から自分が寝るときに使ってるアイマスクを取り出し、雅紀に見せた。
「大丈夫、大丈夫」
智は雅紀をそっと抱きしめた。
『さと、待っててね。ここいてね』
「もちろん。ずっとここにいるよ」
時間になったため、診察室に雅紀を連れて行き、近藤にアイマスクの件を聞くとつけてもいいとのこと。
アイマスクを看護師に渡した。
『行ってくる。頑張る』
口を動かす雅紀の目にはうっすら涙が。
「うん、がんばってね！」
手を振って別れ、智は処置室前の椅子に腰掛けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 301人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いずみ(プロフ) - ひろさん» いつもお読み頂きありがとうございます！これからもよろしくお願いします！ (2020年9月10日 23時) (
レス) id: 3797474e34 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 毎日 更新楽しみにしてます。まぁくん元気になって良かった。続きが楽しみです。 (2020年9月10日 6時) (レス) id: c60b3962ed (このIDを非表示/違反報告)
いずみ(プロフ) - ひろさん» はじめまして！嬉しいコメントありがとうございます！これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年9月5日 23時) (レス) id: 3797474e34 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 初めまして。この作品大好きです。更新されるのを 楽しみに待ってました。素敵な作品ありがとうございます。これからも 読ませていただきます。 (2020年9月5日 19時) (レス) id: c60b3962ed (このIDを非表示/違反報告)
Lima(プロフ) - いずみさん» え！本当に嬉しいです(;_;)どう言葉表現したらいいか...ぜひこれからも楽しんで頂けたら幸いです！！ (2020年9月5日 12時) (レス) id: 8c2f3cec2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いずみ | 作成日時：2020年6月19日 0時
