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「雅紀、ちょっと頑張ろうな〜」
櫻井が痰の吸引のため鼻からチューブを挿入しようとすると、雅紀と目が合った。
これから襲う苦しさを想像したのか、雅紀は目をギュッと閉じ、少し顎を上げた。
松本が手をやんわりと固定する。
「ゲホッ…ゴホッゴホッゴホッ…ゲホッ…」
苦しそうに雅紀が身を捩る。
1度では取りきれず、再度管を入れる。
「雅紀、もう1回だけ」
そう言うと、雅紀がうっすら赤い目で櫻井を見た。
「頑張れる？」
櫻井の言葉に、何も答えず雅紀は目を閉じた。櫻井はそっと雅紀の頬を撫でて、顎に手をやった。
「ウッ…ゲホッゲホッ…ゴホッ…ウゥ…」
溢れた涙を智がそっと拭く。
「まーちゃん、苦しいね。頑張れてるよ」
「雅紀、あと3秒な！3秒だけ！」
櫻井がより奥に管を進めると、グッと顎を引き、もがくように雅紀の足が動いた。
「クッ…カハッ！…ゲホッ！ゴホッゴホッ！んあっ…あっ…」
「まー！もう終わるよー！」
松本が足を押さえる代わりに、智が手を押さえた。智は、苦しみに耐える雅紀を見ていられなかった。
「雅紀、終わりー！お疲れ様！！」
智は雅紀の顔を横向きにし、濡らしたタオルで汗や涙を拭き、緊張で固まった体を松本が撫でた。
雅紀は肩で息をしながら、縋るように智の右手を掴んだ。
「りんごジュース、飲む？」
ご褒美がないと吸引なんてやってらんないと雅紀が昔言ったことがあり、それ以降、智は毎回吸引後に雅紀の好きなりんごジュースを飲ませていた。
「飲む…」
いつだったか、りんごジュースがなくて、慌てて智が家にあったりんごをジューサーにかけていたことがあった。
そこまでしなくても…と思った松本が大野に、もういらないんじゃない？と声を掛けた。
すると智は、「これぐらいで、雅紀の手助けになるんだったら、俺、やってやりたいんだ」と話したのだ。
その智の想いは櫻井にも松本にも刺さり、それ以来りんごジュースは苦しさを乗り越えた後に飲む特別なものとなっていた。
「雅紀、美味しい？」
「ん…おいし…」
雅紀はそう言って微笑んだ。
この笑顔が見れる度に、用意してよかったと智は思った。
「まー！俺も一杯もらうよー！」
「ん…いいよ…」
「雅紀、しっかり痰は取り切ったから。夜は安心して寝るんだぞ」
「ん…ありがと…」
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いずみ(プロフ) - るんるんさん» 初コメントめちゃくちゃ嬉しいです。ありがとうございます！楽しみにして頂けて幸せです。これからもよろしくお願いします。 (2020年4月13日 16時) (
レス) id: 3797474e34 (このIDを非表示/違反報告)
るんるん(プロフ) - この後どうなるんだろ…って毎日ドキドキしてます！これからも応援してます！ (2020年4月13日 11時) (レス) id: 5f4c3622e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いずみ | 作成日時：2020年4月4日 1時
