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「智くん」
彼は医学部時代の１つ上の先輩で、この病院の精神科の医師だ。
「無理すんなよ」
智くんも、喜多川院長に可愛がられていた1人だ。
けれども、准教授や教授のポストには無頓着で、論文を出すこともなく、未だ講師のままだ。
「変わり者の大野先生」
周りはそう揶揄するけれど、喜多川先生が彼に一目置いているのは明らかだったし、僕は彼の才能や人格を心から尊敬していた。
「僕の独断で周りに迷惑をかけてしまったことの方が申し訳なくて」
すると、彼はふふっと笑った。
「翔くんらしいや。翔くんのやったこと、俺は間違ってはいないと思うよ。これだけは伝えようと思って」
きっと、どこかで僕がこの一件で院長に呼び出されたと聞いて来てくれたんだろう。智くんの言葉で、救われたような気持ちになって、心が温かくなった。
「ありがとう、智くん」
彼のように、地位にとらわれず、自分のやりたいことをやる決心ができればいいのだろうが、僕は智くんほど強くない。
それに僕は、いずれ教授となって、喜多川院長と同じ脳神経外科医として、院長に教わった技術を後輩に伝えていきたいという想いがあった。
「じゃあ、俺は病棟に戻るわ」
それだけ言うと、ヨレヨレの白衣をひらっと翻して、精神科病棟に智くんは帰ってしまった。
「あ、そういえばね、大ちゃん、また論文すっぽかしたんだってよ」
「アハハ。そうなんだ。まあ、智くんは論文なんか興味ないんだろうね」
ぺたんぺたんと帰る智くんの後ろ姿を見ながら、相葉ちゃんと少し談笑していた。
そんな和やかな時間もすぐに打ち切られる。
「先生、多田さんが頭痛を訴えています」
医療用スマホに連絡が入った。
「了解」
「相葉ちゃん、点滴用意して」
「分かりました」
慌ただしく日常の業務に戻った。
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いずみ(プロフ) - meiさん» 初コメント下さり、ありがとうございます！嬉しいです！これからもよろしくお願いします！！ (2020年2月7日 16時) (
レス) id: 9c1572c021 (このIDを非表示/違反報告)
mei(プロフ) - 感想書かせていただきます！！ほんとに心が暖かくなる作品だなーと思います！！これから主人公がどうなるのかなーとワクワクしながら更新待っています！楽しみです！頑張ってください！！ (2020年2月7日 14時) (レス) id: fd406e97dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いずみ | 作成日時：2020年1月24日 14時
