13 ページ13
退院届を作り終えるとちょうど、相葉ちゃんが帰ってきた。
「2週間分まで出してもらえました」
「ありがとう。じゃあ、彼女の部屋に行くよ。抜糸もするから。」
「彼女にはなんと？」
「ん？なんともなかったって伝えるよ」
そうやって伝えることが、彼女にできる精一杯の優しさだと思った。
「病院に来れないのなら、せめて安心して帰してあげたいんだ」
「分かりました」
抜糸に必要な道具を彼が持ってきてくれた。
「失礼します」
彼女は眠っていた。
「あ、ごめんなさい。眠ってしまって」
「構いませんよ。こちらこそ、起こしてしまって、すみません」
相葉ちゃんから薬の袋を受け取る。
「検査結果ですが、特に異常はありませんでした。この前、倒れたのは貧血が理由だったみたいだね。ただ、あなたは体質的に頭が痛くなりやすいみたいだから、鎮痛剤を処方しておきます。市販の薬よりもよく効くから、頭痛がしたら飲んで下さい。これは入院費に含まれるから、心配不要です。体調も落ち着いてるし、明日退院しましょう」
薬を渡しながらそういうと、彼女は僕の目を真っ直ぐに見つめてきた。
僕も悟られまいとその目を見つめ返した。
「そうですか。ありがとうございました」
彼女はそっと視線を逸らして、そう言った。
「よかったですね」
全てを知っているのに、笑顔で彼女に向かう相葉ちゃんもプロだなぁと感心する。
「じゃあ、ちょっと抜糸しますね」
額の糸を切る。
彼女、普段はどうやって過ごしているのだろうか。両親はいるのだろうか。
聞きたいことはたくさんあった。それでも、深入りは良くないと自制した。
「うん、綺麗になってる。傷跡も残らないと思うよ。何回か家でガーゼ交換してね」
「分かりました」
「それじゃあ、明日までゆっくり休んで」
部屋を出ようとしたその時、彼女の声が聞こえた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 146人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いずみ(プロフ) - meiさん» 初コメント下さり、ありがとうございます！嬉しいです！これからもよろしくお願いします！！ (2020年2月7日 16時) (
レス) id: 9c1572c021 (このIDを非表示/違反報告)
mei(プロフ) - 感想書かせていただきます！！ほんとに心が暖かくなる作品だなーと思います！！これから主人公がどうなるのかなーとワクワクしながら更新待っています！楽しみです！頑張ってください！！ (2020年2月7日 14時) (レス) id: fd406e97dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いずみ | 作成日時：2020年1月24日 14時
