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第8話(kn視点) ページ10

先日、あの水色に告げられた言葉が頭から離れないまま、森の中を歩く。

「俺と誓約したい…か…」

無意識に出てしまった声に、
徐々に頬が熱くなる感覚がする。
蟠りを振り切るように、顔を左右に振って、
再び早足に森の奥を目指した。

木々の間を進んでいくと、ひとつの小屋が
ひっそりとたたずんでいる。
そこは俺の誓約者であるエルフの家で、
いつも周辺は静まり返っていた。

先日来たばかりのこの家だが、扉の前に立つと
緊張してしまうのは何故なのだろうか。

コンコン、とノックの音を響かせる。
その音は森へと消えていく。
しばらく待っても、中で紫の彼が動いている気配も無く、ただただ静寂に包まれるだけだった。

「いない…のか?」

滅多に家を留守にしない彼がどこへ行ったのか。
ふと、ドアノブを握り手前に引く。
すると、扉はすんなりと開いた。

「…入るぞ」

少し罪悪感を覚えながら、俺は足を踏み入れた。

彼が必ずと言っていいほど、いつも本を読んでいるリビングに繋がる扉をそっと開けると、やはりそこには誰もいなかった。

「…なんだ、本当にいないのか。
珍しいこともあるもんだな」

忍び込んでいるような感覚に、緊張していたのか、
深いため息が出る。
俺はリビングの椅子に腰掛けた。
テーブルに肘を付くと、
テーブルの端に置かれた本に目がいく。

「…なんだこの本」

その本を手に取り、表紙を見やる。
するとそこには"誓約とは"と簡潔に書かれていた。
パラパラとページをめくっていくと、
"誓約によって生まれるものは、愛か。
それとも軋轢か"という文が目に入った。
その文の文字をひとつひとつ確かめるように、
じっと見つめてから、俺は本を閉じる。

「…やっぱ、今日は帰るか」

そう呟いて、立ち上がったそのときだった。

「やあ、まさかまたここで会うとはね」

あからさまに、自身の肩がビクッと跳ねる。
後ろから聞こえた声と、重みさえ感じる強い魔力。
ゆっくりと後ろを振り向くと、
やはりそこには、鳳凰の翼を背中に持つ赤がいた。
彼は、不気味なほどにニコニコと笑っている。

「何かスマイルに用事?」

「…い、や…別に」

「ふ〜ん、そう」

強い魔力を辺りに充満させながら、彼は続けた。

「僕はスマイルに用があったんだけど、
きんときがいるならいいや」

「…え?」

すると、突然彼は強めに俺の肩を押し、
俺は床に腰をつく。
見上げると、彼は妖しく笑っていた。

「きんときとスマイルの誓約。
…僕が塗り替えてあげる」

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しら(プロフ) - arisu(WT)さん» ありがとうございます(´;ω;`)励みになります...! (2019年2月3日 11時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
arisu(WT) - どうもアリスです!これめちゃくちゃ好こです!更新応援してます (2019年1月26日 9時) (レス) id: e4d3d4fa63 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - イワシ君さん» はじめまして!読んで頂きありがとうございます(´;ω;`)頑張ります!! (2018年12月27日 21時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
イワシ君(プロフ) - は、初めまして!とても楽しく読ませていただいています!もぉbroooock カッコよすぎです!応援してます!頑張ってください!! (2018年12月27日 19時) (レス) id: e9f141d671 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - 春雨さん» コメントありがとうございます!お褒めいただき嬉しい限りです(´;ω;`)これからも精一杯頑張ります…! (2018年12月11日 17時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しら | 作成日時:2018年12月2日 12時

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