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第2話(sm視点) ページ4

森の中にある小さなログハウスで、
紫の彼は淡々と本を読んでいた。
静かな木々の中で、厚い本を何冊も。
それだけで時間が過ぎてしまうのが彼の日常で、
外に出るのは、図書館に本を借りに行く時くらい。

エルフには寿命が無いためか、もうどれだけの年月を過ごしているのかも分からない。
此処に訪れる者もいないため、周りが歳をとっているのかさえ曖昧だ。
ところが最近、頻繁に此処に通う変わり者がいる。

ギィ…と、扉が開く音が響いた。

俺は扉の方に目をやると、想像していた通り、
赤い彼が立っていた。
彼は背中の美しい羽をたたみ、家の中へと入ってくる。
圧倒的な魔力が、近づいてくる感覚に、
俺はまだ慣れていなかった。

「やあ、スマイル。また本を読んでいるの」

ふわふわとした声の彼は、
少し首を傾げ、透き通った青い瞳を細めている。

「…あぁ」

一言返事をして、また本に目を落とす。
すると、彼は不満に思ったのか、
俺に近づき肩に手を置いた。

「なんの本読んでるの」

彼が本を覗き込んだ瞬間、
ぶわっと魔力が周囲を包み込む。
下位種族の俺には、強すぎる刺激だった。
肩に置かれた手から、じわじわと魔力が
身体を伝っていく感覚。

「わ、るい…ぶる、く…も、少し…離れて、」

途切れ途切れに言葉を紡ぐと、
赤は一度ピタリと止まってから、俺から離れた。

息を吸うことも困難だった俺は、
一度大きく深呼吸してから、彼を見上げた。

「…何か、用があるのか」

俺は赤に問うと、彼は緩く首を振った。

「ただの暇つぶしだよ」

そう言った彼の声は冷淡だった。
彼はゆっくりと俺の向かいの椅子に座る。
そして頬杖を付いて、真っ直ぐに俺を見据えた。
頬杖を付いた彼の手の甲には、黄色い紋章が光っていた。

「その青い紋章。だれとの誓約なの」

口を開いたかと思えば、彼の声はとても低く、
周囲を取り囲む魔力も強くなっていた。

「…きんときだよ」

俺は右手の甲を擦りながら言う。
すると彼は、そう。と言って目を伏せた。
目を伏せたまま、彼は口を開く。

「スマイルは、きんときと誓約して幸せ?」

「…どうだろうね、実際、きんときとは
滅多に会わないし」

本に目を落としたまま、俺は答える。

「ふ〜ん」

薄く開いた赤の目は、
じっと青の紋章を見つめていた。

「そういうBroooockだって、
きりやんと誓約してるんだろう」

俺がそう言うと、彼は、まぁね。と言って立ち上がり、ボソッと1つ呟いた。

「誓約なんてしなきゃよかったよ」

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しら(プロフ) - arisu(WT)さん» ありがとうございます(´;ω;`)励みになります...! (2019年2月3日 11時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
arisu(WT) - どうもアリスです!これめちゃくちゃ好こです!更新応援してます (2019年1月26日 9時) (レス) id: e4d3d4fa63 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - イワシ君さん» はじめまして!読んで頂きありがとうございます(´;ω;`)頑張ります!! (2018年12月27日 21時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
イワシ君(プロフ) - は、初めまして!とても楽しく読ませていただいています!もぉbroooock カッコよすぎです!応援してます!頑張ってください!! (2018年12月27日 19時) (レス) id: e9f141d671 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - 春雨さん» コメントありがとうございます!お褒めいただき嬉しい限りです(´;ω;`)これからも精一杯頑張ります…! (2018年12月11日 17時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しら | 作成日時:2018年12月2日 12時

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