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第16話(kr視点) ページ18

図書館からの帰り道を、
1人でとぼとぼと歩く。


…Broooockが…きんときと…


しっかりと見えたその光景が、
脳裏に焼き付いている。
じとりと、自分の手の甲を見やる。
やはりそこには、赤い紋章が浮かび上がっていた。

「…Broooockは、誓約を掛け持ちしたのかな…」

上位種族の彼には、2人の中位種族との誓約を
掛け持ちすることなんて容易いことだ。

…いっそ、誓約を切ってくれたら良かったのに。

そんな暗いことを考えつつ、淡々と歩いていたら、いつの間にか自宅へと着いていた。
それなりに大きな門を、ゆっくりと開ける。
そこから続く石畳に足を踏み出すと、庭に何かがいる気配を察知し、尻尾がピンと立った。
恐る恐るそちらを見ると、そこには見慣れた姿。

「……シャークん…?」

少し掠れた声が口から漏れる。
その声に反応して、彼は此方に振り返った。

「おかえり、きりやん」

縁側に座りながら優しく微笑む彼に、
気持ちが和らぐ。
釣られて微笑みながら、ただいま、と返して、
彼の方に歩み寄る。
もう、彼の魔力にも完全に慣れていた。

ゆっくりと、彼の隣に腰を下ろす。
縁側に付いた手に残る赤色が目に入り、
1つ溜息を吐いてから空を仰いだ。

「…どうした、きりやん。なんか元気ないな」

彼が心配気に俺の顔を覗き込む。
緑色の美しい瞳をしばらく見つめてから、
俺は半ば無意識に口を開いた。

「ねぇ、シャークん」

ここまで声に出してから、躊躇する。
薄く開いた唇を閉じようとすると、彼がしっかりと見つめてくるために、それは出来なかった。

「…何?」

彼の唇が少し震える。
…勢いで声に出してしまえ。
そう思って、俺は口を開いた。


「…俺の誓約を塗り替えて」


…言った。
泳ぎそうになる目を、無理矢理彼に向ける。
彼と目が合う。
彼の瞳は揺れていた。

「…でも_」

「_シャークんなら出来るでしょ?」

"でも、きりやんに負担がかかる"
…きっとそう言おうとしたであろう彼の言葉を
遮るように、俺は言った。
俺は追いやるように、彼の肩を強く掴む。

「…お願い…それが俺の望みなの…」

そう言って、彼に手の甲を差し出す。
俺の手は、少し震えていた。

するといきなり、ガシッと俺の手が掴まれる。
俺の肩は、ビクッと跳ねた。

「…いいんだな」

これが最後の確認だ。と訴えてくる、
彼の真っ直ぐな瞳。
少しばかり、低くなった声。
それに、俺は少しどきりとしながら、
ぎこちなく頷いた。

頷くと、彼の瞳がぎらりと光った。

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しら(プロフ) - arisu(WT)さん» ありがとうございます(´;ω;`)励みになります...! (2019年2月3日 11時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
arisu(WT) - どうもアリスです!これめちゃくちゃ好こです!更新応援してます (2019年1月26日 9時) (レス) id: e4d3d4fa63 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - イワシ君さん» はじめまして!読んで頂きありがとうございます(´;ω;`)頑張ります!! (2018年12月27日 21時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
イワシ君(プロフ) - は、初めまして!とても楽しく読ませていただいています!もぉbroooock カッコよすぎです!応援してます!頑張ってください!! (2018年12月27日 19時) (レス) id: e9f141d671 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - 春雨さん» コメントありがとうございます!お褒めいただき嬉しい限りです(´;ω;`)これからも精一杯頑張ります…! (2018年12月11日 17時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しら | 作成日時:2018年12月2日 12時

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