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第13話(sm視点) ページ15

…ゆっくりと、
妖狐の潤んだ瞳が顕になっていく。
その瞳は揺れていて、何か良くないことが
見えてしまったことを悟らせる。

「…きりやん、何が見えた…?」

俺が問うと黄色は目を泳がせ、
小さく、震える唇を開いた。

「…Broooockが…
きんときと誓約しようとしてる…」

床を見つめる彼の言葉に、目を見開く。

「……は…?」

捻り出した俺の声は、酷く掠れていた。

…Broooockが…きんときに…?

…何故だ。
何故彼がきんときに…。
彼は俺と誓約しようと思っていたんじゃないのか?
あれは嘘?
じゃあ何故、毎日のように顔を合わせに来た?
ただの気まぐれか?
特にたいした理由はなかったと言うのか?

"スマイル。僕は本気だからね"

あの時言った、彼の目は真剣だった。
嘘をついていたとは、到底思えない。

…ただ、俺をからかっていただけなのか。


身体が脱力していく。
その様子を見た黄色は、言わなきゃ良かった、と
ばかりに唇を押さえ、心配げに顔を覗いてくる。

「…ス、スマイル…その…ごめ…」

「…」

潤んだ彼の瞳に心が痛む。
…彼だって、自分の誓約者が、他の者と誓約を交わしているなんて、不安で堪らないはずだ。
それなのに俺を心配してくれる彼は、
やはり優しすぎる。

「…大丈夫。別にたいした事じゃない」

無理矢理、笑顔を貼り付けて彼に言うと、
彼には全てお見通しなのか、少し苦しそうな表情をした。

「…行かなくて…いいの?」

「…あぁ」

不安げに問う彼に、短く返事を返して、
もうほとんど色の抜けた右手を握った。

「きりやんこそ、いいのか?」

「…うん」

ほんの少し、寂しさの混じった笑顔をこちらに向ける。
ふと彼の右手が見に入り、手の甲を見ると、
赤の紋章が、妖しく光を帯びていた。
その悲しい光が胸を締め付けてくる。
俺はそれから逃れるように口を開いた。

「…俺、今日はもう帰るわ」

まだ、震える脚に鞭を打ちながら、
ゆっくりと立ち上がる。
その様子を見た黄色は、そっと手を貸してくれた。

「…気をつけろよ」

未だに心配げな瞳をしてこちらを見てくる彼に、
小さく笑顔を作る。

「…ありがとう…そっちもな」

俺がそう言うと、彼はそっと自身の紋章を
手で隠して、必死に笑顔を顔に貼り付けていた。

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しら(プロフ) - arisu(WT)さん» ありがとうございます(´;ω;`)励みになります...! (2019年2月3日 11時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
arisu(WT) - どうもアリスです!これめちゃくちゃ好こです!更新応援してます (2019年1月26日 9時) (レス) id: e4d3d4fa63 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - イワシ君さん» はじめまして!読んで頂きありがとうございます(´;ω;`)頑張ります!! (2018年12月27日 21時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
イワシ君(プロフ) - は、初めまして!とても楽しく読ませていただいています!もぉbroooock カッコよすぎです!応援してます!頑張ってください!! (2018年12月27日 19時) (レス) id: e9f141d671 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - 春雨さん» コメントありがとうございます!お褒めいただき嬉しい限りです(´;ω;`)これからも精一杯頑張ります…! (2018年12月11日 17時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しら | 作成日時:2018年12月2日 12時

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