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第9話(kn視点) ページ11

床に腰を付き、上を見上げるとそこには、妖しい笑みを浮かべる赤がいる。

「…誓約を…塗り替え、る…?」

無意識に感じている恐怖心で、声が震える。
その震えた声に、目の前の彼は目を細めて言った。

「そう。大丈夫、痛くはしないよ」

「…は…?」

そう言った彼は、俺に覆い被さるようにしゃがみこむ。
ぶわりと頬を掠める彼の魔力に、
今にも酔いそうだった。
目先のキラキラと輝く翼に包み込まれていく。
その中で彼は、紋章の浮き出る俺の手を引いた。
その紋章を、彼はじっとりと眺める。

「…綺麗な色だね」

吐息混じりに彼はそう呟く。
彼の魔力で、力が抜け、目が霞む。
そのぼやけた視界の中で、
彼が、優しく俺の手の甲を撫でたのが見えた。

「…ごめんね、少し、我慢してて」

彼はそう言うと、俺の手の甲に唇を寄せる。
抵抗する力も無く、俺の紫の紋章に、
彼は口付けた。
その瞬間、身体にビリビリと電流が走る。
さらに苦しくなっていく呼吸。
力が抜けて、何も出来ない身体。
…体内から、魔力が吸い取られていく感覚。

「…ぐ、ッあ、は…」

座っていることもままならなくなり、
後ろへ倒れそうになる肩を、彼が支えた。

「…なん、で…お、れ…なんだ…」

気を抜いたら尽きてしまいそうな気力の中、
途切れ途切れの声で俺は問う。

「…君がここにいたから。それだけさ」

もうすっかり、紫の魔力は体内から消え、
紋章から色が無くなった。
そして彼が赤の魔力を注ごうと、再び唇を近づけた。
…そのときだった。


突然、
天と地がひっくり返るような感覚に襲われる。
ふわりと、身体が宙に浮くようだった。
開くことさえ億劫な、自身の瞼に鞭を打ち、
ゆっくりと目を開ける。

…するとそこには、黒い翼。
見覚えのない、大きく艶やかな翼だった。
その翼をぼんやりと眺めていると、
すぐ近くから声が聞こえてきた。

「…きんときに、何してんの」

声がする方を見上げる。
そこには、黒いフードを深く被り、
瑠璃色の瞳を鋭く釣り上げ、
真っ黒の翼を背中に宿した、Nakamuがいた。


…現状を理解するのにしばらく時間がかかった。
これは彼の、堕天した姿なのか…。

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しら(プロフ) - arisu(WT)さん» ありがとうございます(´;ω;`)励みになります...! (2019年2月3日 11時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
arisu(WT) - どうもアリスです!これめちゃくちゃ好こです!更新応援してます (2019年1月26日 9時) (レス) id: e4d3d4fa63 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - イワシ君さん» はじめまして!読んで頂きありがとうございます(´;ω;`)頑張ります!! (2018年12月27日 21時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)
イワシ君(プロフ) - は、初めまして!とても楽しく読ませていただいています!もぉbroooock カッコよすぎです!応援してます!頑張ってください!! (2018年12月27日 19時) (レス) id: e9f141d671 (このIDを非表示/違反報告)
しら(プロフ) - 春雨さん» コメントありがとうございます!お褒めいただき嬉しい限りです(´;ω;`)これからも精一杯頑張ります…! (2018年12月11日 17時) (レス) id: 91f6d82092 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しら | 作成日時:2018年12月2日 12時

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