marble (ページ37)

今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:33,396 hit

ⅩⅩⅩⅥ ページ37

日高｢ねぇ、あっち公園？｣

日高さんが指差したのは
マンションに向かう道から少し外れたところにある公園

｢うん、よく小さい子達が遊んでるよ｣

日高｢行こ｣

私の手を掴み急な方向転換をする

日高｢夜の公園、案外いいかもな｣

未だ私の手を握ったまま
少し小さいベンチに腰掛ける

涼しい風が通っていくのに
私の左手は彼の体温で暖かいまま

｢ねぇ、アイス食べようよ｣

日高｢おっいいじゃん｣

上機嫌に袋を漁る行為によって離された左手が
不自然にまだ熱を持っていた

公園で夜風とアイス
お酒で火照った体を冷ますのには丁度いい

日高｢Aちゃん、好きな食べ物は？｣

｢オレンジ。なんで？｣

日高｢好きな物って食べ物に限らずだけど、話してると心明るくならない？｣

｢なんか分かるかも｣

同意してしまった以上
この会話にノるしかない

｢日高さんの好きな食べ物は？｣

日高｢餅とチーズ｣

｢組み合わせ最強｣

日高｢好きな色｣

｢青｣

日高｢俺も｣

｢好きなスポーツ｣

日高｢サッカー｣

｢バレーボール｣

日高｢好きな酒｣

｢ビール｣

日高｢右に同じ｣

｢好きな場所｣

日高｢Aちゃん家｣

｢え、そーなの！？｣

日高｢何か分かんねぇけど、すげー落ち着く｣

アイスを食べながらいい大人が何やってんだって思われるような会話をしばらく続けた

傍から聞いたらシュールなんだろうな

日高｢じゃあ最後｣

アイスもとっくに食べ終わり
もう終わりかな、なんて思った頃

日高｢夜は、好き？｣

タイミングを図ってたかのように
一番答えづらい質問が飛んできた

｢好き、、、かな｣

それは嘘じゃない
夜って事に少し悲しい思い出があるだけだ

日高｢なら、何でそんなに悲しい顔すんの｣

｢え、？｣

言葉にならない声を抱え彼を見れば
少し苦しそうな表情をしていた

日高｢ベランダでも、その顔してた｣

あの人のことを思い出す時
日高さんが言う悲しい顔をしているんだと思う

｢あんまりね、いい思い出が無いから｣

過去の大きな出来事をその一言で纏めてしまう
今は誰にも話そうと思わないから

日高｢そっか。聞いて欲しくなったらいつでも言って、待ってるから｣

日高さんはそれ以上聞いてこなくて
帰り道は気まずい沈黙が続いた