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ⅩⅩⅩⅠ ページ32

｢楽しかったー｣

祐飛｢久しぶりにこんなに笑ったわ｣

｢ほんとに｣

その会話を最後に改札を抜けるまで
お互い一言も発さなかった

｢んじゃ、また月曜ね｣

祐飛｢A！｣

ホームに向かおうと足を向けた時
背中にかかる大きな声

｢ん？｣

その場で振り向けば

祐飛｢今日はありがとな。これお前に｣

渡されたのはあのショップの紙袋

｢いいの？｣

祐飛｢お前の為に買ったんだから貰ってくれなきゃ困る｣

｢ありがとう｣

素直にお礼を伝えれば
頭をかいて照れた顔をした

祐飛｢んじゃあな｣

それだけ言ってホームの階段を駆け下りていった

紙袋をまじまじと見つめてしまう

これがモテる理由か

ふふっ、と笑って
ホームに向かって歩き始めた

駅から家までの道

明日の朝ごはんを買うべくマンション最寄りのコンビニ入った

雑誌コーナーを流し見すれば
AAA特集と大きく書かれたファッション誌で目線が止まる

思わず手に取ると
表紙にはクールな表情の6人

仕事相手だし買った方がいいのかな、と悩んでたら
持っていたはずの雑誌がスっと消えた

｢おねーさん、これ買うの？｣

咄嗟に振り向くと
キャップを深くかぶったマスクの男

怖くて何も言えないでいると

｢Aちゃん、俺｣

その人は少しだけマスクをずらし帽子をあげた

｢え、日高さん？なんでっ？｣

日高｢この近くで仕事して、ここの前通ったらAちゃん見つけたから降ろしてもらった｣

さも当然でしょ？と書いてあるドヤ顔に溜息が漏れる

｢怖かったんだけど｣

日高｢それはごめんね｣

気づいてくれるって思ってたからさー
なんて言いながらお弁当コーナーへ向かう彼が持っているカゴには買うか悩んでいたそれ

取り返そうと彼のあとを着いて行けば

何食おーかなーなんて言いながら
真剣にお弁当を選ぶ横顔

｢晩御飯、食べてないの？｣

日高｢今日食べる時間なくてさー｣

その言葉に少しだけいたたまれなくなる

ま、私を見つけて入った訳だし
晩御飯くらい手間じゃない

本日2度目の言い訳をしながら日高さんに近寄った

｢もし良かったら、家で食べる？｣