marble (ページ31)

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祐飛｢変な男に遊ばれんなよ｣

フッ、と鼻で笑って私からバングルを奪い
自分の手首にはめた

祐飛｢男ならピッタリだな、そんなに遊ばない｣

｢そうだね。すみません、これください｣

お会計を済ませている間
彼はニコチン切れだと言って外へ出た

店員｢お客様、裏に何か彫られますか？｣

｢M.Hでお願いします｣

一瞬、Sが浮かんだけど本名にした

店員｢最短で30分程でお渡しできますので｣

電話番号を伝え一度店を出る

祐飛｢おせーよ、あれバングルは？｣

｢イニシャル彫ってくれるって。30分はかかるよ｣

祐飛は少し考えた素振りを見せて

祐飛｢なら受け取ったら大将のとこ来いよ。飯食おう｣

｢わかった｣

祐飛｢じゃ、先行ってるわ｣

小さくなる背中を見送り
近くのカフェに入った

30分も経たないうちに連絡があり
お店へと向かう

シルバーのバングルに黒で彫られた物は
予想以上の仕上りに満足して祐飛のいる居酒屋へと足を向けた

ブランドショップからほど近い大将野居酒屋
社会人一年目の頃はよく同期で集まって慰め合ってた

しばらく見なかった扉を開けると
一気に騒音が耳にはいる

大将｢おお！Aちゃん久しぶり！｣

｢お久しぶりです。祐飛は？｣

大将｢あっち｣

店の奥に進むとカウンターに彼の姿を見つける

｢ごめん、お待たせ｣

祐飛｢ほんとに。おせーっつーの｣

ジャケットを脱いでカウターに落ち着くと
目の前に置かれるジョッキ

祐飛｢腹減った｣

｢先に食べててよかったのに｣

祐飛の目の前にはジョッキとお通しの小鉢だけ

祐飛｢男へのプレゼントとか聞いてないわ｣

｢目に付いたからしょーがないでしょ｣

祐飛｢てか、誰にあげ｣

｢大将！唐揚げ食べたい！｣

祐飛が言いかけた言葉は聞こえなかったフリをした

誰にって
日高さんになんて言えるわけないじゃん

それにこれはプレゼントじゃない
ご飯もタクシーも一銭も払っていないお礼

なんて自分に言い訳してるなんて
馬鹿みたい

｢とりあえず、乾杯？｣

祐飛｢ん、乾杯｣

カコン、と気持ちのいい音を響かせ
仕事終わりの1杯を堪能する

それからはバングルの話に触れてくるわけでもなく
楽しい会話と美味しいご飯、上司の愚痴で盛り上がった

｢大将、また来るね！｣

祐飛｢ありがとなー！｣

大将｢おう！いつでもおいで｣

大将の見送りを受けて駅まで歩く