marble (ページ18)

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ⅩⅦ ページ18

終わらない

時刻はもうすぐ22時

とっくに退社時間は過ぎている

全部は出来なくても最低限のことはやってしまおうと気合を入れPCに向き合った時

携帯のバイブが何かしらの通知を伝えた

集中力が切れてることもあってすぐに携帯に手を伸ばす

あ、日高さん

【今日はありがとう。明後日空いてたらご飯でもどう？】

初めてのメッセージは想像とは違って簡素な文面だった

接待や飲み会が無ければ夜は基本フリーだ

頭の中でスケジュールを確認し、了承の旨を伝える

【ありがとう！詳しいことはまた連絡する】

すぐに返ってきた返事に楽しみにしてますとだけ送り、もう一度デスクに向き合った

なんとか終電に乗り込んで家に着いたのは25時前

仕事を持ち帰ることなく終わらせられたのは日高さんのお陰かな

あのやり取りの後、疲れているのに集中できた

日高さんパワー、侮れない

シャワーを浴びてお気に入りの音楽を聴きながらゆっくりと過ごすこの時間が最近のお気に入り

穏やかにやってくる睡魔に抗っていると

急に携帯が鳴り響いた

画面に表示されたのは今日登録されたばかりの名前

「もしもし」

『Aちゃん？起きてた？』

なんとなく疲れた声色の日高さん

「起きてましたよ」

『こんな時間にごめんね。なんか話したくなって』

昼間とは違う機械を通した優しい声に少しドキッとしてしまう

「大丈夫ですよ。何かあったんですか？」

『言ったじゃん、俺は何もなくても連絡するよって』

静かな空間で耳に響く声

そう言えば、彼氏いた頃ってこんな感じだったかも

「言ってましたね」

歴代彼氏と日高さんを比べるのは申し訳ないけど

一番落ち着く声かな

『まだ寝ないの？』

「残業終わりでさっき落ち着いたところなんです」

『そっちも大変だったんだ』

はぁ、と大きなため息をついた日高さん

相当疲れてるんだ

「日高さんも大変だったんですね」

『え？』

不意を突かれたような高い声に思わず笑ってしまった