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XⅠ ページ12

日高「今年初めのツアー、珍しく地方公演見に来てたでしょ？」

「はい。ちょうど実家に顔を出そうと思っていたので、仲のいい地元の友達と見に行きました」

日高「終演後、会場の外で絡まれなかった？」

その問いかけに少しドキッとした

「確かにもめましたけど、あれ私が悪いんです。」

あの日の出来事を知っていたことに驚いた

ファン同士でもそんなに話題にならず、その場限りでの事だったから

日高「スタッフの中でちょっとした騒ぎになってたんだよ。会場の外でライブを悪く言った女性とファンが揉めていて大事になるかもしれないって。」

日高「だから見に行ったんだよね、会場の陰から」

その一言に胸がざわついた

「見られてたんですか？」

日高「うん。その揉め事の原因がAちゃんだった」

あからさまに顔を歪めた私を見て、日高さんはふふっと笑った

「ちなみに、何言ってたかとか聞こえました？」

恐る恐る聞いてみると

日高「前回を超えるライブじゃ無かった、最高の上書きは出来ないかな。って言ってたよね？」

全てお見通しな顔つきで日高さんは尋ねた

「そんなニュアンスのことを言いました」

気まずさと申し訳なさが相まって、ひたすらにグラスを見つめた

日高「責めてる訳じゃないんだけど、キツかったんだよねその言葉。たぶん俺に思い当たる節があるからだろうけど」

だんだんと語尾が小さくなっていった日高さんを見やると、少しだけ虚しそうな顔をしていた

日高「だから今度は納得のいくライブを、って心がけてやってきた。Aちゃんに最高だって思ってもらえるように」

「え？」

耳に入ってきた言葉にビックリしすぎて変な声が出た

日高「俺がここまで無我夢中に走ってこれたのは、Aちゃんのお陰でもあるんだよ」